成長を続けるアジアの違いとは?

2019年4月17日アジア金融

「アジアが成長している」というのは簡単ですが、ひとえにアジアと言っても歴史やそこから形成された強み、今後の見通しは各国によって様々です。代表的な国を比較する中で、考察の軸を定めいければと思い、経済的な視点をメインに横軸で比較してみました。

「次の時代を担うのはアジアだ」

と言われて久しいですが、ひとえにアジアといってもその成長幅も、成長戦略も、今後の展望も大きく異なってきます。

したがって、

「アジアに投資を行いたい」
「アジアに移住したい」

といった漠然としたイメージがあったとしても、ご自身が考えている方向性と、候補先の国の選択が適切化はしっかりと確認しておく必要があります。

たとえば、近年著しい成長を遂げているベトナムは、ビジネス、投資、様々な面で日本人からも注目されていますが、特有の事情により問題が生じるケースというのもあるようです(本文にて詳述します。)。

今回は「アジア」でひとくくりになっている国々の中でも、注目度の高い国々をいくつかピックアップし、まとめてみました。その特徴や経済成長の背景、今後の成長性、方向性を概観していきます。

取り上げた国について、情報収集のご参考にしていただくだけでなく、今回取り上げていない国々を見る上でも、「国を見る視点」「他国と比較する視点」としてご参考程度にしていただけますと幸いです。

今回の考察ではシンガポール・中国・韓国・ベトナム・タイ・フィリピンについて取り上げます。

 

 

1.アジア各国の概要(人口・産業・治安)

まずは、それぞれの国の簡単な概要について取り上げていきます。

 

①シンガポール

シンガポールは成立そのものが1965年と新興の国家でありながら、東南アジアの中でも早期に台頭してきた国家です。地の利を生かした中世以来の流通・小売りの分野に加えて、外資を誘致し、製造業や金融業に力をいれてきたのもシンガポールの成長を押し上げた大きな要因です。一方で、国土が狭く、人口も多くないため他の東南アジアでよくみられるような農林水産業は目立ちません。治安的には非常に良好で日本と同レベルと言われています。

②中国

中国はアジアでもトップクラスの成長率を誇る国家です。広大な国土と圧倒的な人口数をアドバンテージとして製造業で発展。他の成長国家と比較し製造業の比重がいまだに高いことは一つの特徴として挙げられます。基本的には都市部は警察機能が充実しており治安は良好です。

③韓国

韓国も近年、先進国入りした成長著しいアジア国家の一つです。21世紀に入ってから交通網などのインフラも急速に発展しました。かつてはアジアに出回っていた電化製品と言えば高品質な日本製でしたが、現地ごとのマーケティングなどのビジネスセンスでシェアを奪い、存在感を強めています。治安も都市部を中心に非常に良好です。

④ベトナム

ベトナムは2000年以降の台頭が著しい、新興の成長国です。政治的には社会主義でありながら市場経済を導入し、発展してきました。海外からの投資も活発で経済の中心地、ホーチミンは今や近代都市となっています。従来からの農林水産業、初期の成長の要であった製造業が主要ですが、近年の急成長の背景にはITの影響力も大きく寄与しています。警察機能の整備が十分とは言い難いですが、目立った重犯罪は少なく、安心できる国家であると言えます。

⑤タイ

タイは製造業を中心に、海外の資本を積極的に受け入れることで発展してきた国家です。成長性や、政治・経済の安定性から投資先としても注目を浴びてきました。政治・経済的に安定しているというのが従来の評価ですが、近年は軍事クーデター、反政府デモが起きるなど若干の不安要素もあります。

⑥フィリピン

フィリピンは近年でこそASEAN諸国の中でもトップクラスの成長を誇っていますが、かつての成長率はアジアの中でも最低ランクで「アジアの病人」とまで呼ばれていました。英語が共用語である特性を生かしたBPO産業の発展を皮切りに急速に発展。20世紀後半に先進国からの資本の投下が避けられていたこともあり、他の新興の成長国と比較し、製造業の比重がかなり低いのも特徴的です。治安はかつては危険視されていましたが、近年は急速に改善傾向にあります。

 

 

 

2.アジア各国の経済成長率

それぞれの概要の中でも簡単に触れてはきましたが、ここで改めて近年の各国の成長率やその要因、背景についても簡単に考察してみます。こういった事情をみてみることで、今後の成長性についても見えてくるのではないでしょうか?

①シンガポール

シンガポールの経済成長率は、ここ5年は3%前後となってきています。
低迷しているというよりは2010年前後より経済的に急成長する段階を終え、安定期に入ったというニュアンスの方が強そうです。

また、主に中国を相手とした貿易額が頭打ちになっていることや、移民政策を推し進めた結果、シンガポール人の貧困が深刻化し、移民を抑制せざるを得なくなってきているといった課題にも直面しています。

②中国

中国の経済成長率はここ5年間、平均して7%弱という高い成長率を誇っています。これでも少し落ち着いてきた数字で、とりわけ2000年からの10年間は平均して10%以上という高い成長を続けていました。

元来、製造業で大きく成長してきた国家ですが、近年は金融やITなどのサービス産業も伸びてきています。一方で、一人っ子政策による人口のピークや、環境問題といった課題も抱えています。

③韓国

韓国の経済成長率は、ここ5年で3%前後です。アジア通貨危機の時期を除いては安定して組み立て工業を主導として比較的高水準を維持しながら成長してきた国家ですが、近年は経済成長の陰りが出てきたともいわれています。

要因としては、政府の法人税増税や規制強化といった企業の負担を増やす政策がこれまで世界にイニシアチブをとっていた企業の競争力が低下しているとの指摘もあります。

 

④ベトナム

ベトナムの経済成長率はここ五年間、6.5%前後と、高い成長率を記録しています。
共産党一党独裁の元に市場経済を導入する、中国と同様の政治経済体制のもと進められた「ドイモイ政策」はアジア通貨危機やリーマンショックの影響も最小限にとどめながら、安定して高成長を続けてきました。元来、外資を受け入れながら製造業の輸出主導で発展してきていますが、近年はエレクトロニクスの輸出が特にシェアを高めています。

⑤タイ

タイの経済成長率はここ5年間で平均して2%後半程度です。(2014年は洪水の影響もあって落ち込んでおり、それを除けば3.5%程度です。アジア通貨危機などの特定の時期を除いては停滞もなく、急成長もなく、輸出を中心に緩やかに成長している国であると言えます。

一方で、3%台という成長率は先進国入りしていない国家としては低いと指摘する声もあります。人件費の面で言うと、他のASEAN諸国にアドバンテージが取れない中で、次なる成長戦略の構築が求められます。

⑥フィリピン

フィリピンのここ5年の経済成長率は6%の中で推移しています。アジアの中でも中国、ベトナムに次いで高い成長率を誇っています。

フィリピンの特徴としては、政治的混乱期に外資が入ってこなかったこともあり、経済成長が遅れただけでなく他の新興アジア諸国に比べて製造業の割合が高くないことが挙げられます。代わりに伸びたのが、BPOなどのサービス業。第二言語として英語教育がなされているフィリピン人の英語力は、非ネイティブ圏内の中では随一です。今後、人口ボーナスが見込めることからも、高い経済成長が続くことが期待されています。

 

 

 

3.アジア各国のビジネスチャンス


各国の直近を中心とする、経済成長およびその背景について簡単に比較を行いました。踏まえて、今後、それぞれの国にはどのようなビジネスチャンスが、そしてそれに伴う投資チャンスがあるのかを考察していきます。

①シンガポール

シンガポールは経済的に安定期に入ったうえ、少子高齢化も進んでいます。しかし、同じく少子高齢化に悩む日本とは異なり、外国人労働者を寛容に受け入れる土台があるので、今後、外国人や高齢者などを積極的に産業の中に巻き込んでいくことが求められます。

アジアの中でも金融やITといったイニシアチブを取れる分野が複数ある点は今後も強みとなっていくことが予測されています。「フィンテック」といった分野も親和性が高いでしょう。

②中国

中国は元来、「製造業」「輸出」といった分野に政府主導で力を入れ、高い成長率を維持していましたが、米中貿易戦争はその産業構造の課題が浮き彫りになった出来事とも言えます。

一方で国民の所得水準が上がりつつある中で、国内の消費欲求は拡大しており、消費サービス業を中心とした第三次産業の発展が次なる成長のけん引役として期待されます。

③韓国

過去比較的堅調に成長を続けていた韓国ですが、ここ数年の停滞に加え、今後の見通しとしても、楽観的ではない見通しが数多く出ております。

得意分野である電子産業や製造業は、現在状況が芳しいとは言えないですが今後ロボットやコンピューターの需要が世界的に高まっていく中で再興できるかは一つのポイントなのではないでしょうか?

④ベトナム

現在高い成長率を維持しているベトナムは、ビジネス面でも、投資面でもかなり脚光を浴びています。経済成長の度合いと比較して人件費が安いことも、海外の企業からすると魅力が大きいです。

国力に対してまだ不十分なインフラにも投資のチャンスが大きいですが、それ以上に期待されているのが進行のIT産業。勤勉な国民性もオフショア開発といった案件で先進国から積極的に需要が増えてきています。

⑤タイ

製造業で伸びてきたタイですが、他のASEANと比較して人件費は高額であり、かつ今後爆発的な人口増も望めないことから、単純な製造業に依存していく形では今後は難しいことが予想されています。

「タイランド4.0」の構想に向けて、より高度な産業で付加価値を出していけるかがタイの経済の今後を握っているかもしれません。そういった分野への投資は成功した場合のリターンも大きいことが予測されます。

⑥フィリピン

BPOで伸びてきたフィリピンは他のASEAN諸国に比べ製造業という労働者を多く必要とする産業が強くありません。人口ボーナスはポジティブに捉えることができる一方、国内では既に失業率が高く、全体としては発展していながらも貧困層が依然多くいることは課題として挙げられます。

現在、インフラの整備や、経済特区を設立することで積極的な外資の誘致を行っていますが、それに伴う第三次産業の成長がフィリピンの今後の成長に大きく影響するかもしれません。産業構造上、国際送金も多いことからフィンテック分野への進出も期待できます。

ひとえにアジアと言っても、その歴史的背景も全く異なります。それに伴って、どのような産業に伴って発展してきたかも違えば、どの時期に発展したかも異なってくるため、今後、どの程度の成長が期待できるのか、また、どういった産業に注目すべきなのかも大きく異なってきます。

ただし、似たような条件を比較すると傾向を探ることもできます。第二次産業を中心に伸びてきた国家と、第三次産業を中心に伸びてきた国家には発展の仕方に特に顕著に差が出ています。

今後、単純に人件費の安さのみが付加価値となるような労働集約型の産業では成長に限界がある上に差別化が難しくなってきます。そういった市況の中で次なる戦略として付加価値の高い製造業、もしくは、金融、ITといった分野を駆使したサービス業に力を入れられる国が今後も伸びていくのではないかと予測ができます。

そういった視点で考えた時、有望な投資先として挙がるのは第三次産業を中心に伸びてきた上、依然として高い成長率を誇るフィリピン。次いで、ITでも付加価値を出しているベトナムといったあたりでしょうか。

どういった軸を大切にし判断を行うかといった点は、目標とする結果によって様々ではあるとは思いますが、今回の横軸での考察が何らかの指標の策定の一助になっていれば幸いです。