成長著しいフィリピンの裏側
その著しい経済成長でアジアの中でも頭角を現しているフィリピン。その概要や経済の歴史と未来、現在のフィリピンにおいて注目すべきポイントなどを余すことなく解説します。
フィリピンと言えば、日本人からしても「セブ島」は有名ですね。海外旅行の中ではハードルの低いアジアリゾートでも屈指の人気を誇るセブ島。「短期語学留学」の選択肢としても、費用の安さ、プログラムの質の高さ、そしてやはり海が美しいなどの周辺環境の良さから人気なのをご存知の方も少なくないのではないでしょうか?
旅行、留学先として「セブ」が魅力的なのは多くの方に知られていますが、フィリピン全体の魅力は単なる観光産業にはとどまりません。実は、フィリピンは現在急成長中のASEAN諸国に中でも屈指の経済成長率を誇り、世界から注目を集めています。
語学留学先としてフィリピンが好まれる理由の一つが、フィリピン人の英語はノンネイティブ圏内では最もレベルが高いとされている点。第二公用語として英語が採用されているフィリピンの英語レベルの高さは、語学留学のみならず、コールセンターのアウトソーシングや、オフショア開発といった幅広い分野に応用されています。
今回は、改めてフィリピンについて、概要を概観し、その経済成長の裏側を考察してみます。改めて、フィリピンの魅力やポテンシャルを再発見するお力になれれば幸いです。
1.フィリピンの概要(人口・産業・政治)
フィリピンは東南アジアの南部に位置する島国です。首都マニラがあるルソン島や旅行、留学の人気エリア、セブ島は有名ですが、大小の島々をあわせると7,109島にも及びます。全ての島の面積を足し合わせても30万㎢と、決して大きくはなく、日本の8割程度の大きさです。
長期間、スペインの植民地化にあったこともあり、ASEAN諸国の中で唯一のキリスト教圏の国家でもあります。
【フィリピンの人口、ピラミッド区分について】
人口は1億人強。世界的に見ても12位と比較的高い位置にあります。なお、日本の人口は約1億2000万人、世界的には10位の人口ですが、少子高齢化が進行し、今後人口は減少の一途を辿ることが予測されています。フィリピンの人口は年間に約1.7%と比較的高い水準で伸びているので、2030年までには日本の人口を追い抜くことが予想されています。
平均年齢は24歳とかなり若く(参考までに、日本は47歳)、人口分布もきれいなピラミッド型をしています。統計からは今後も数十年にわたって人口が増え続けることが予測されています。
一方で、日本よりも狭い国土に人口が増え続けているため、とりわけ都市部での人口過密による交通渋滞や住宅不足などの問題は既に生じ始めています。
【フィリピンの産業】
フィリピンは元来、熱帯雨林の気候を活かした農林水産業がもっぱらの主軸産業でした。スペインの植民地時代に大規模な農園が整備されたこともそういった産業構造の形成に影響しています。とりわけ、ココナッツ、バナナといった温暖な気候で育つ農作物は輸出の需要も多く、外貨の獲得にも貢献してきました。
現在も、農林水産業は全労働人口の3割弱が従事している主要産業であることには変わりはありませんが、近年経済の発展とともに勢いを伸ばしているのがコールセンターなどのBPOやソフトウェアのオフショア開発といったサービス業です。英語が第二公用語であるフィリピン人の英語力が非ネイティブ圏においては特筆して高いのは先ほども触れましたが、その英語力は語学留学だけでなく英語圏からのアウトソーシング業にも生かされています。
とりわけ、アメリカは人件費の安さや、時差が13時間であり、本国の夜間帯が逆にビジネスアワーであるという特性を生かし、上に代表するような産業においてフィリピンを活用しています。
また、フィリピンの人口の約1割にあたる約1000万人が海外に出稼ぎに出ており、そこで稼いだお金を本国の家族のもとに送金しています。厳密には「国内の産業」ではありませんが、フィリピンの経済を見る上で特徴的なポイントです。
【フィリピンの政治について】
フィリピンは、正式名称「フィリピン共和国」の名の通り、大統領を元首とする共和制国家の形を採用しています。行政、立法、司法が独立する三権分立の体制が確立されています。
フィリピンは16世紀にスペインの植民地となり、20世紀初頭から第二次世界大戦直後までは一時的に日本の軍事政権支配下にありましたが、基本にはアメリカの支配下にありました。戦後も形の上では独立しつつも長年、実質的にはアメリカの影響を強く受け続けていました。1960年代半ばに就任したマルコス大統領による独裁政治が20年ほど続きましたが、コラソン・アキノ大統領の時代から民主化が進みました。
現在は2016年より現職のドゥテルテ大統領が就任。過激な発言や、麻薬犯罪に対する強硬な超法規的姿勢は各国から批判を受けながらも、フィリピンの治安改善には大きく貢献し、国民からは高い支持を得ています。
2.フィリピンの経済成長について
【フィリピンの経済成長の歴史】
現在でこそ、成長著しいフィリピンですが、かつては「アジアの病人」と揶揄されるくらいに経済が落ち込んでいる国家でした。
マルコス大統領の独裁政権下、初期こそ「アジアの優等生」と呼ばれていたフィリピン。しかし、後期の政情不安が原因となり、日本をはじめとする海外の資本フィリピンへの進出は避け、他のアジア諸国に積極的な投資を行いました。
こうした環境下、フィリピンはオイルショックの影響もあり対外債務のデフォルトに追い込まれました。アジアの病人と呼ばれ、長期間にわたりASEAN諸国でも最下位の経済成長率で低迷。1980年代~90年代にかけては苦しい時代を送りました。
フィリピンがASEANでもトップクラスの急成長を見せたのはベニグノ・アキノ3世前首相の時代からです。平均して6%という高い経済成長率は、歴代大統領の中でも随一でした。
要因としては、前述のBPO産業の発展や、出稼ぎ労働者による海外からの送金が挙げられます。一人当たりのGDPは「消費市場が加速する」と言われている基準値である3,000ドルを2018年に突破。個人消費の意欲が高い国家であるだけに、ここからの急加速も期待できます。
今後、2000年代中盤までは人口ボーナスも期待できると言われ、機関投資家からもポジティブな評価を受けています。
【成長する一方での国民の貧困】
フィリピンが国全体として成長していることは、疑いようのない事実ですが、一方で、貧富の差が大きいことは課題として挙げられます。
国民の80%以上を占める労働者階級の層の平均資産額は、アジア全体の平均値を割っており、国民の大多数はその成長の恩恵を十分に受けきれていないという側面は否定できません。貧困層がスラム街やゴミの山の中で生活しているというのは、「アジアの病人」時代のイメージの名残ではなく、現在も確かに存在する姿です。
フィリピンの失業率は6%、とりわけ、若年層の失業率が50%を超えており、アジアの中でも突出して高い水準です。「出稼ぎ」が多いことはフィリピンの産業の特徴として挙げましたが、国外に仕事を求めて出ていかざるを得ないという背景もあります。
【今後のフィリピンの経済】
現在は高い成長率を誇っているフィリピンですが、一方で貧困問題という大きな課題を抱えています。今後のフィリピン経済はどのようになっていくのでしょうか?
結論としては、ポジティブに捉えられている側面が強いです、フィリピンの貧困や都市部の過密といった課題の背景には、インフラの未整備といった事情も挙げられます。独裁政権下、海外の資本が積極的に参入してこなかったこともあり、経済成長のレベルと比較してインフラ整備が未熟である点は指摘されています。
現在、フィリピンではインフラ整備を進めるとともに、経済特区を設けることで海外企業も積極的に誘致しています。政治的に現在は比較的安定している上、国民が流暢に英語を話すことができる点も、海外企業にとっては進出のハードルを下げています。加えて、カジノなどの観光産業の成長にも力が入れられています。
これらの施策が成功することにより、国内の課題を解決しながら、成長を続けることが期待されます。
3.フィリピンの見どころ
経済的にも成長し、今後も勢いのあるフィリピン。親日国であり、英語も通じることもあり旅行先としても高い人気を誇ります。観光の目線でフィリピンの魅力を知っていただきため、行っておきたい観光地をまとめてみました。
①イントラムロス(マニラ)
首都マニラにある、スペイン植民地時代につくられた地区です。フィリピンでありながら、スペイン植民地時代の名残を残している、一味違った雰囲気を楽しむことができます。ステンドグラスやパイプオルガンで有名なマニラ大聖堂はイントラムロスの中心部に立っています。
②チョコレートヒル(ボホール島)
日本人に屈指の人気を誇る観光地セブ島から程近いボホール島。セブ島観光のコンテンツの一つとして日帰り、もしくは1泊といった短期滞在で立ち寄る観光客も多いようです。世界最小のサル、ターシャを見ることもできます。
ボホール島の中心部に位置する、円錐形の山々が連なる光景は、その形や色(寒気には茶色に染まる)から「チョコレート・ヒルズ」と呼ばれています。
③オカダマニラ(マニラ)
2017年に建てられた、日本人経営の世界最大級のカジノリゾートホテル「オカダマニラ」。4200億円を投じて建てられたという総合リゾートは完全に別世界です。現在、完成しておらず一部のみ(ホテル、カジノなど)営業している状態ですが、カジノ、プール、ナイトクラブ、ショッピングモールなど、オカダマニラだけですべてが完結できる空間が完成しそうです。
立ち寄るだけでも一見の価値があるスポットですが、1泊数万円からと、フィリピンにしては強気ながらも決して手の届かない金額ではありません。
④SMモール・オブ・アジア(マニラ)
東南アジアと言えば、各国の大都市に存在する巨大ショッピングモールを想像される方も多いかもしれません。フィリピンにも複数の巨大ショッピングモールがありますが、その中で最大のものが、マニラにあるSMモール・オブ・アジア。ショッピングだけでなく、映画館などのエンターテイメント施設やレストランも充実しており、一日中滞在することのできる施設です。
⑤ホワイトビーチ(ボラカイ島)
ビーチリゾートとして人気なのはセブ島ですが、フィリピン中部に位置するボラカイ島も人気のリゾート地です。とりわけ、西側にある「ホワイトビーチ」はアジアのベストビーチにも選ばれた観光スポットです。
ほんの一部しか紹介することができませんでしたが、海、山といった自然から、歴史的スポット、世界最新のエンターテイメント施設まで、様々な方向の需要にこたえることができるのもフィリピンの魅力です。
4.フィリピンのおすすめ投資
経済成長性や国としての魅力を再度ご認識いただいたところで、最後にフィリピンの投資商品について簡単に紹介したいと思います。
経済成長著しいフィリピンにおいて、おすすめできる投資商品は、「レンディング事業」への投資です。貸し付けで利益を上げるために重要なポイントは
① 高い利率を設定できる
② 設定した高利率で、なお不良債権化しない
の2点です。たとえば、日本の金融業においては、上限金利が18%と定められています。これでも借りる側からすると十分に高い利息ではありますが、これ以上の金利は「違法」となる上限が定められています。
しかし、フィリピンをはじめとする急成長している東南アジア諸国にはそういった法的な上限の規制はなく、とりわけ成長著しいフィリピンにおいては、年利にして70%(月利5.5%)という非常に高い利率での貸し付けが当然のように行われています。
一方で、どれだけ高利率での貸し付けを行っても、返済がなされずに倒産されて、不良債権化してしまっては話になりません。それだけの高利率での貸し出しを行って、本当に回収できるのでしょうか?
結論としては、融資が行われた法人のうち、不良債権化してしまったのはたったの1.24%。逆に言えば、月利5.5%という高額な金利でもなお、98%以上の法人が返済を行い、事業を成長させているのです。こうしたデータを見ると、フィリピンの将来性がいかに高いものであるかをご実感いただけるのではないかと思います。
レンディングにおける「負け」は貸し付けたお金が返ってこず、不良債権化されることなので、ことフィリピンの「法人」に対してのレンディング事業は極めて高い勝率を誇ると考えてよいのではないでしょうか?
仮に、個人で株式投資を行った場合、それ以上の運用成績を出せるというケースも当然ありますが、かなりリスクを負う投資になる可能性が高いです。
また、逆に銀行預金であればほぼ100%元本割れはありませんので、フィリピンでのレンディングよりも勝率は高いですが、そのリターンは雀の涙ほど。
いかに、経済成長している国へのレンディング事業がリスクとリターンの関係性の中で日本の投資では想像もしがたいパフォーマンスが出せるかをご実感いただいたのではないでしょうか?
まとめ
かつては独裁政権での混乱や、オイルショックの影響を受け、「アジアの病人」と称されるほどの低迷をしていたフィリピンですが、BPO事業の発展などの背景から現在はアジアでも屈指の経済成長を遂げています。
インフラの未整備や貧富の格差問題など課題は残っているものの、今後国がますます発展していく中で、解決されていくことが期待されます。
かつては治安に不安もありましたが、現在はかなり改善されています。英語が通じる親日国でもありますので、観光にも魅力的です。自然、歴史、そして世界最高峰のエンターテイメントと、様々な魅力が詰まっています。
そして、フィリピンに実際に赴きそのエネルギーを目で確かめたらぜひ持ってほしいのが、その成長に「投資」を行うという視点です。成長市場への投資は低リスク高リターンが狙えることも、ぜひ抑えておいてください。