2019年度版各国の仮想通貨対応まとめ

2019年5月7日海外金融

全体相場としては低迷している仮想通貨ですが、各国のこれまでの、そしてこれからのスタンスは大きく異なります。今後仮想通貨投資を進めていく中で、注目すべき国の動向について代表的な国を取り上げ、考察してみます。

仮想通貨元年と言われた2017年と比べて2018年は仮想通貨にとっては苦難の時代でした。今後、仮想通貨がどのようになっていくかは誰にもわかりませんが、新しいお金の形の一つとして今後完全になくなっていくことはそうそう想定できないのではないでしょうか?

実際、自国の通貨を信用していない人々にとっては、仮想通貨は信頼できる資産保全の手段としてその需要は高まってきています。それに伴い、国家にとっても、仮想通貨はもはや無視できるものではなくなってきています。G8といった世界的な集まりの中でも仮想通貨は大きな話題として取り上げられていますね。

ただ、仮想通貨の取り扱いについてはそれぞれの国家によって大きく異なります。自国の通貨の信用を脅かすものとして規制の方向に進む国家もあれば、逆に仮想通貨やブロックチェーン関連のプレーヤーを積極的に取り入れていくことで自国の発展に活用しようというスタンスの国家もあります。

今回は、仮想通貨の取り扱いについて代表的な国をいくつか挙げながら、比較し考察してみます。今後仮想通貨をやっていくにあたり、どの国に注目すればよいかといった指標にもなるのではないでしょうか?

今回は、比較対象として

  • 日本
  • 中国
  • シンガポール
  • フィリピン
  • マルタ

といった国を考察していきます。

 

 

 

1.各国の仮想通貨対応方針

まず、書き出してみた各国の仮想通貨の対応方針について簡単にまとめてみます。

①日本:

「禁止」はしていないものの、一貫して慎重な姿勢を見せています。仮想通貨取引所の営業は金融庁の認可の元でしか行えず、仮想通貨取引所での取引にあたっては厳格な本人確認が必須となっています。(マネーロンダリングや脱税対策の意味合いも強いですが)

仮想通貨決済の導入も徐々に進んではいるものの、島国で送金の必要性が低い点や現金決済が主流な点からか、通貨としての浸透の度合いも低いです。

②中国:

一貫して仮想通貨には敵対的なスタンスを貫き、規制の方向を強めています。その歴史的背景から政府や人民元への信用が低い中国では早い段階から仮想通貨が浸透していました。(人民元の切り下げへの対策といった側面もあります。)また、土地代、電気代の安さからマイニング事業にも積極的に参加がありました。

中国政府はそういった状況に対し、ICO、マイニング、ビットコインの取引そのものとへ次々と規制を行い、国内の大手取引所を閉鎖に追い込みました。

こういった煽りを受け、中国や香港に拠点を持つ仮想通貨取引所が国外に拠点を移す現象も目立ちました。

2018年の仮想通貨の暴落局面の背景にはこういった中国の動きが少なからず関与しています。

③シンガポール:

東南アジアでも「金融大国」としていち早く発展したシンガポール。仮想通貨やブロックチェーンに対しても、比較的寛容、友好的なスタンスを示しています。ブロックチェーン技術を利用した国際送金の将来性にも高い期待を示しています。

一方で、資金洗浄対策や投資家保護を目的とし、適正な規制を設けていくような動きも目立ちます。

④フィリピン:

フィリピンは近年の経済成長が著しいことでも注目されていますが同時に仮想通貨というテーマからも注目を浴びています。

フィリピンは産業ごとに経済特区を設け、税制を優遇することで外資企業の誘致をはかっていますが、仮想通貨業界、ブロックチェーン業界にもこれを適用し積極的に誘致を行っています。

フィリピンは産業構造上、出稼ぎ労働者から国内への送金が多いため手数料が低い仮想通貨の発展は大きな利益をもたらすといった側面もあります。

⑤マルタ:

ヨーロッパの小さな島国であるマルタ共和国は、仮想通貨の分野で注目を浴びました。世界最大級の仮想通貨取引所、バイナンスは中国の規制を受けてマルタに拠点を移しています。

ブロックチェーンの研究に積極的であり、仮想通貨関連の法整備も進んでおり、「仮想通貨先進国」と言えるような環境が整っています。

 

 

2.各国の税率について

つづいて、仮想通貨の利益に関する税率について比較してみました。各国によってかなり状況が異なってきますので、各国の仮想通貨に関するスタンスと併せて確認してみてください。

①日本:

日本においては2016年まで仮想通貨に関する税金については規定がなく、利益について税金は生じていませんでしたが、2017年より、利益確定したものについては「雑所得」という扱いで課税対象になります。

税率は利益の金額による累進制度が取られており、利益額によっては控除額を除き45%という非常に高い税率が生じます。仮想通貨の暴騰により多くの「億り人」が誕生した2017年の確定申告には、各仮想通貨取引所の売買記録より1000万円以上の利益確定を行った口座に対しては国税が全てリスト化していたことも話題になりました。

②中国:

中国においては現在全面的に仮想通貨の売買が禁止されています。

③シンガポール:

シンガポールは仮想通貨に限らず、投資やビジネスにおける「節税」というキーワードで登場することもしばしばありますが、仮想通貨の世界ではどのようになっているのでしょうか?

シンガポールにおける仮想通貨の取り扱いは短期でのトレードか、長期の保有かによって扱いが異なってきます。

短期のトレードで得た利益に関しては「所得税」という扱いで課税対象になります。シンガポールの所得税率は最高で20%なので、トレードで高額な利益を得るようであれば、シンガポールへの移住という形でかなりの節税を行うことができます。

さらに、長期保有での投資とみなされた場合、キャピタルゲインに対しては課税がされません。

④フィリピン:

フィリピンでは、仮想通貨の利益は所得税とみなされます。日本と同様に累進課税の仕組みを取っていますが、最高税率は32%。日本の税率と比較すると、かなり節税することができます。

シンガポールと同様に、投資や実業で成功を収めた高所得者の移住先としてよく選択されています。

⑤マルタ:

マルタは仮想通貨に限らず、元来タックスヘイブン(租税回避地)の側面を持っている国家です。

マルタの法人税は、表向きは35%と決して低くはありませんが、様々な制度を上手く活用することによって5%程度にまで抑えることができます。法人の資産として仮想通貨を扱うことで大幅な節税が可能となる可能性があります。

 

 

3.各国の法律について

各国の対応や税率をみれば、基本的なスタンスについてご理解いただくのはそれほど難しくはないかと思います。改めて各国がどのような法整備を行っているのかも確認していきます。

①日本:

日本は仮想通貨に対して敵対的なスタンスは取っていませんが、慎重な対応を取っています。

法律は2017年になって、ようやく整備され始めました。仮想通貨取引所を認可制にし、厳しい水準を敷いたり、匿名通貨の取り扱いを許可しなかったりと、悪く言えば遅れており融通の利かない部分の多い法律の設定ではあります。しかし、投資家の保護、犯罪に使われないための法整備の強化といった健全な市場の形成を目指している解釈もできます。

一方で、詐欺的案件の多いICOへの規制が遅れている点が指摘されます。

②中国:

中国はかつて最も仮想通貨の取引が盛んでしたが、現在は世界の他国に類を見ないレベルで厳しい規制を敷いています。ICOの規制、マイニングの規制、そして、最終的には仮想通貨取引所も規制し、国内での仮想通貨の取引そのものを全面的に禁止しました。

一党独裁の政治体制が敷かれている中国においては強硬な政策が取られやすい傾向にあります。国家の権力たる通貨発行権を脅かす仮想通貨に厳しいスタンスを取るのも不自然ではありません。

③シンガポール:

シンガポールは比較的仮想通貨の導入には寛容な国家ではありますが、ICOや決済サービスへの規制など、規制は強化の方向にあります。

取引を制限するというよりは、健全な運用が行われるように徐々に規制を制定しているような方針を取っています。

④フィリピン:

フィリピンは、仮想通貨に対して経済特区を設け海外からの企業を誘致したりと、仮想通貨の導入に対して前向きな姿勢を取っています。

一方で、世界の流れと同様にICOや取引所への規制を強める方向に動いているのみならず、仮想通貨犯罪に厳罰を求めるなど独自の路線も取っています。

⑤マルタ:

「仮想通貨先進国」を目指すマルタは、仮想通貨関連の法整備を他国に先立って進めることで、仮想通貨周辺、ブロックチェーン周辺の企業の誘致を積極的に行ってきました。こうした施策が功を奏し、マルタは単なるタックスヘイブンではなく、仮想通貨の側面からも注目されています。

一方で、決して規制が甘いといったようなことではなく、マルタでの仮想通貨業者の試験は6割もの受験者が不合格となっており、高いリテラシーが求められるものとなっています。

 

 

4.仮想通貨を前向きに進めている国

同じく、税率面での優遇が大きいマルタは、加えて仮想通貨の推進、研究を国家政策としています。こういった国家の積極的な後押しの元仮想通貨に取り組んでいる国に中国の影響を受けた取引所が移転してくるなど、施策としては成功していると言えるでしょう。

フィリピンも節税単体で考えると、いわゆる租税回避地、タックスヘイブンには及ばないものの税率面でも日本よりは有利になります。また経済特区を設け、仮想通貨関連の企業を優遇するといった友好なスタンスをとっていますが、その背景には仮想通貨の発展により受けられる恩恵が大きいことがありそうです。

人口の1/10が出稼ぎに出ているフィリピンでは、出稼ぎ先から本国に向けた国際送金が非常に多いですが、その手数料、すなわちフィリピンではなく出稼ぎ先に落ちているお金も膨大です。ここに手数料が安い仮想通貨が代替できれば、フィリピン国内に残る利益も大きくなります。仮想通貨の恩恵を直接的に受けられそうな国家が仮想通貨を後押しするのは自然に理解ができますね。

 

 

まとめ

仮想通貨はこれまでのお金のあり方だけでなく国家の在り方すら変えてしまう可能性のある開発です。各国により、対応が大きく異なってくるのも、とりわけ、自国の通貨を守るために法的規制をかけて仮想通貨に敵対的な態度を取るのも不自然ではありません。(皮肉なことにそういった規制を強めている国家の国民に限り、自国の通貨を信用していない側面が強いです。)

一方で、仮想通貨を味方につけるような施策を取ることで国力を伸ばしていく方針を取ろうとしている国家も確実に存在します。とりわけ、マルタのように元来タックスヘイブン的な側面が強かった国や、フィリピンのように産業構造上、国際送金の需要が大きい国家であれば、その重要性に説得力が増しますね。

今後の仮想通貨がどのような形を辿るかはまだ読めない部分がありますが、今後仮想通貨がまた勢いを取り戻し、大きな資産を築くことができた場合、税金対策として海外に移住してしまうというのも現実的な選択肢として有効であると言えます。

たとえばマルタであれば少々ハードルは高そうですが、親日で環境の良いフィリピンやシンガポールであれば、現に日本からの移住者も少なくありません。(いずれも暮らしやすい国ですが、物価から考えるとより暮らしやすそうなのはフィリピンです。)

仮想通貨と今後付き合う上で、念頭に置いてみてください。