アジア通貨 比較

2019年4月17日アジア金融

 

1.日本円価値これまでの推移

日本円はアジア最強の通貨と言われており、世界の通貨と比較しても常に最上位にランクインしている通貨です。

「有事の円」などと言われ、市場全体の相場が悪い時、リスク商品からの避難先としても選択されがちです。その世界での信用の高さは、かつて自国通貨が経済破綻したジンバブエにおいて、法定通貨として円が使われたことが象徴的です。

まずは、もっともなじみが深い円について、その価値の推移を辿るとともに、今後の展望を考察してみます。

元々、ドルと円の交換レートが最初に設定されたのは、明治時代。金本位制のもとで1ドル=1円で設定されました。現在では考えられないレートですが、現在のドル円相場を考察する上での基準値としては1949年に制定された単一為替相場です。この時、設定されたのは1ドル=360円の固定レート。こちらも現在でこそ、海外旅行、留学も多くの人にとって身近なものとなりましたが、当時いかにハードルが高いものであったかが伺いしれます。

その後、1971年にニクソンショックで金本位制が廃止となり、スミソニアン協定をへて1ドル~308円と円の価値が上昇しました。

2年後の1973年には変動相場制へと移行しました。

返送相場制に移行してからの円は上下動はありつつも一貫して強い傾向にあります。とりわけプラザ合意後より急激に円の価値が上がっています。一時期は100円台を割って80円台、70円台まで円高を記録したこともあります。

一方で、輸出中心の産業構造となっている日本にとって、円高は必ずしも手放しに喜べる現象ではありません。アベノミクスの施策の中で「円安・株高」というワードが掲げられたことからも、単に円高であればあるだけ良い、というものでもないことが伺えます。

また、繰り返しになりますが、日本円は現在非常に強く、世界からも信用の高い通貨です。この信用自体がむこう数年で瓦解するようなことは中々想像しにくいです。

とはいえ、日本は今後少子高齢化、人口減少が明らかな中でその将来がバラ色とは言い難いのは想像に難くないでしょう。手持ちの資産全てを日本円に換算できる形で保有しておくというのは今後リスクになっていく可能性もありますので、そういったシナリオも認識した上で、一部の資産を別の形で保有することも視野に入れた方がよさそうです。

 

 

2.アジア通貨価値とこれまでの推移

資産を日本円以外の形で保有する、といってもそれが預貯金に限った話ではなく、国内不動産や、円換算がベースとなる金融商品での保有では、リスクヘッジとしては不十分。当然、「現金のみ」という選択肢と比較するとリスクヘッジにはなっていますが、日本円の弱体化というリスクへの対策が不十分だからです。

円建て以外の資産の持ち方としては、たとえば「外貨」や「仮想通貨」がありますが、仮想通貨は大きなポテンシャルを持っている一方で今後が読めない部分もあり、少なくとも資産の大半を投資するのはリスクです。

そこで、外貨、とりわけ、成長著しく、現在投資家層に人気のアジア通貨について代表的なものをいくつか挙げ、その通貨のこれまでの推移を簡単にまとめてみます。

①中国/元

まずはアジアの中でも最も成長著しい中国の通貨、人民元についてです。人民元は現在の中華人民共和国が建国される少し前に誕生しました。発行元は中華人民銀行です。

特徴的なのは、中国通貨当局の管理の元に、変動相場制の中でのその変動幅を意図的に抑え込んでいる「管理フロート制」を取っている点。国家が通貨のレートを管理しているとも言え、事実、アジア通貨危機の際には管理を強化し、実質的に固定相場のような体制をとっています。

現在は徐々に管理体制を弱めてはいるものの、管理フロート制は維持しています。直近、元安の傾向がありますが、中国政府による意図的な経済政策という見方も出ています。

現在、1ドル=6.5元~7元程度で推移しています。

②韓国/ウォン

続いては、韓国のウォンです。日本に次いで直近で先進国入りを果たした韓国の通貨の変遷や行く末は、今後伸びていくであろうアジア、とりわけ東南アジア諸国の動向を追う上で、参考になるかもしれません。

ウォンという単語が使われるようになったのは、戦後すぐですが、現在流通しているウォンが成立したのは1962年、朴正熙を中心とする軍事政権の時代の話です。

アジア通貨危機のさなか、1997年に変動相場制へと移行しましたが、アジア通貨危機でデフォルト寸前まで追い込まれた韓国の通貨価値は短期間で半減しました。

2007年以前にウォン高が進み1ドル=900ウォンだった時代もありますが、一転して2009年には1ドル=1500ウォンと下落する韓国通貨危機を経験しています。

現在は1ドル=1050ウォン~1200ウォンの間のレンジに収まっているケースが多いです。

③タイ/バーツ

続いては東南アジアの中では比較的早期に成長を見せ、現在も安定した水準で成長し続けているタイの通貨、バーツです。周辺のラオスやカンボジアでは、自国の紙幣の信用が低く、タイバーツも広く流通しています。

1980年代~90年代半ばまで、多くの東南アジア諸国が成長していく中でも目立っていたのがタイでしたが、アジア通貨危機に直面してその成長は一度停滞。そもそも通貨危機を引き起こしたのがバーツであることも有名ですね。一時期はその価値が短期に半減しました。通貨危機を機に、完全変動相場制へと移行。

その後は政情不安を抱えながらもリーマンショック以降は1ドル=30~35バーツと比較的安定的なレートで推移しています。2019年現在は、比較的、バーツ高の状態です。

④ベトナム/ドン

現在アジア諸国の中で第二位の成長率を誇る、ベトナムも比較において欠かすことはできません。

現在のベトナムドンは、南北統一により通貨が統一されてから使用されています。発行元は、ベトナム国家銀行。

ベトナムはアジア通貨危機の中でも、国家による強い通貨管理を維持し、壊滅的な打撃を回避したことも印象的です。

市場経済を導入している現在でも、中国と同様の管理変動相場制を採用しており、輸出中心の産業構造の中で、ゆるやかなペースでのドン安を維持しています。現在は1ドル=2万3千ドン強といったレート水準を維持しています。

⑤フィリピン/ペソ

最後に、成長率第3位でとりわけ近年の急成長が著しいフィリピンのペソについて考察します。フィリピンペソは2010年から紙幣を一新したことも記憶に新しいですね。印刷会社がデザインを間違えるといたハプニングも話題になりました。

フィリピンは他の東南アジアが大きく成長を見せた1980年~1990年代に、政情混乱などから低迷しており、「アジアの病人」と評されていましたが、近年、英語力と人件費の安さを強みに、BPOなどのサービス業で急速に成長し、注目を浴びている国家です。

現在、ペソ安のトレンドが続いており、1ドルが50ペソ強程度のレートです。

 

 

3.各通貨の長所と短所

各国の通貨の推移を確認してみましたが、その上で改めて現在、もしくは今後投資の対象として魅力的なのかという点を考察していきます。それぞれのメリットとデメリットを以下の表にまとめてみました。

それぞれ、簡単に解説していきます。

①中国/元

アジアで最も成長率の高い中国。一人っ子政策による人口抑制もきいており人口ボーナス期は終了しておりますが、人口、資源ともに豊富でまだ成長の余地は残しているといえます。

通貨のレートを政府主導である程度コントロールし安定させている点も、通貨に対する信頼性の要素として捉えることができます。

一方で、共産党一党独裁による政治リスクを常に抱えているほか、その歴史的背景から世界的な評価と比較して自国民が国家や自国通貨に信頼を置いていない点もリスクとして捉えられます。

②韓国/ウォン

ウォンは韓国の経済レベルと比較してその変動制の高さや流動性の少なさから、資産性が低いと捉えられており、不人気な通貨です。

逆に考えれば本来の国力と比較して割安な通貨と捉えることもできるため、韓国の今後を評価し、割安なうちに購入するという投資判断もし得ます。

ただ、韓国は現状、今後大きく発展すると確信のある材料が不足な感もあり、そちらもウォン安の要因となっているようです。

③タイ/バーツ

ゆるやかに成長を続けるバーツも、将来性と安定性のバランスから手堅い投資家層から依然として好まれている投資先です。

一方で、タイという国そのものが、安定的な成長を見せ居ている一方で、その現在の世界での経済的地位と比べると成長率が低いとも言えます。タイバーツは現在、割高な水準にあるほか、首都バンコクの不動産の価格は頭打ちであるなど、現状、実態に比べて過大評価されているといった印象も高まってきています。

また、南部の独立戦争やクーデターの中でも経済に打撃を受けていない点今のところプラス材料ではあるものの、政情が不安定であることは事実。今後それが絶対に悪影響にならないとは限らない点はリスクとして捉えておきたいです。

④ドン/ベトナム

ベトナムドンは現在、投資家層に注目されている、有望な投資先です。今後も高い成長が望めるというだけでなく、政府主導のもとに意図的に「ドン安」の政策がとられており、輸出主導型のベトナムの産業構造と親和性の高い政策がとられています。

一方で、相場を政府がある程度意図的に操作していることはリスクでもあります。市場経済を導入しているとはいえ、中国と同様の一党独裁の社会主義国。今のところ、中国ほどの強硬な金融政策は目立ちませんが、リスクとしては念頭に置いておくべき事項です。

⑤ペソ/フィリピン

フィリピンペソもまた、現在投資家からの注目が集まっている対象であると言えます。

以上、アジアの中でも投資家から注目の通貨の比較を行いましたが、中でも魅力的なのはフィリピンペソです。

今後の成長性だけでも十分な投資対象であるにも関わらず、現在、割安な外貨でもありますので絶好の投資チャンスと考えることができます。

ペソ安は政策的に行われていると思しき要素もある一方で、経常収支悪化、貿易赤字のあおりを受けている側面もあります。

こちらについては、「国内の消費の需要」という長い目で見ると経済的にプラスの要素も原因となっているため、改善していくことが求められます。

 

 

4.その中でもフィリピンペソは魅力的

以上、主要な通貨を比較してみました。比較してみると、成長性、割安感、リスクといった総合的な側面で見て、現状最も魅力的と言えるのはフィリピンペソではないでしょうか?

フィリピンの重要産業であるBPO事業においては、ペソ安であれば、国外の発注者は安く発注できることになりますので、フィリピンへの発注が増えることが期待できます。

また、フィリピンは現在、様々な分野で経済特区を設け、海外からの資本の誘致を積極的に行ってます。これらの投資も、ペソ安であれば投資効率が相対的に上がるので、現状のペソ安のトレンドは有利に働いていくことが期待できます。

産業構造的にも、政策的にも今後の高い成長が望めますが、それに加えて魅力的な要素が、リスクの低さです。

同様に、成長性が高く、政策的に割安になっている通貨として、ベトナムドンが挙げることができますが、ベトナムは一党独裁の社会主義国であることが、とりわけ国外の投資家の視点から見るとリスク視されています。現に、ベトナムは魅力的であるが、政府の動向が読めないため投資を躊躇しているという投資家も少なくないようです。

そういった要素を総合して考えた時、魅力的な選択肢はフィリピンペソであると考えられます。