これで絶対に脱税は不可能?!CRSの仕組みと加盟国まとめ

2019年4月17日税金・法律

海外でビジネスや投資をする方であれば、絶対に知っておかなければいけない”CRS(共通報告基準)”という枠組みをご存知でしょうか。

一昔前はシンガポールや香港での法人設立が流行り、節税や一部脱税が行われていました。現在はこのCRSの仕組みにより、脱税は不可能な状況になってきています。

その仕組みの根本であるCRSとは一体何か、どういった目的で作られ、海外でビジネスや投資をする人にどういう影響を与えるのか、またアジアで加盟している国、していない国をまとめました。

目次

脱税を不可能にするCRSの仕組みとは

そもそも、CRSとはどんな仕組みなのでしょうか。CRS(共通報告基準)について、その仕組みをご紹介します。

 

CRS(共通報告基準)とは

CRS(共通報告基準)とは、外国の金融機関に口座を作り、それを利用することで行われる国際的な脱税工作を回避するために、経済協力開発機構(OECD)が定めた制度です。

金融口座情報を自動で交換する制度で、現在では多くの国々が参加しています。日本では017年1月1日から施行されました。

100を超える国と地域が参加しているCRS(共通報告基準)は、日本ではどのように扱われているのかご紹介しましょう。

税法上の居住地が日本以外の国にも存在しているという人や法人で、日本以外の居住地が報告対象国であるという場合、個人の口座情報などを、銀行から国税庁に年に1度報告する義務となります。

各国の銀行から報告された情報は、各国の税務当局が管理し、報告対象国同士で相互共有されます。

さらにこの基準は参加国それぞれの国内法に組み込まれることにより、現地の法令として適用され、海外口座を利用した脱税行為をしっかり見抜いて罰することに活かされているのです

なぜCRSの枠組みが必要になったのか

なぜCRSのような国際的な金融の枠組みが必要になったのでしょうか。それは、国内での経済活動における税金を少しでも節税するために、税金の安い国や非課税の国に口座を開設し、資産を本国から隠しておく、という行為が常々問題視されてきたからです。

もともと日本よりも税法が厳しいアメリカではいち早く問題視され、さらにこうした納税回避を防止するため、FATCAという税制を2010年に制定し、2013年から施行しています。

経済活動に関する徴税方法は、属地主義と属人主義に分かれており、日本を含めほとんどの国が属地主義を採用しています。

属地主義…国や地域に居住している人から税金を徴収する
属人主義…どこに在住していても、国籍をもっている人から税金を徴収する

属人主義の代表はアメリカです。アメリカ人はどの国に住んでいても、国籍がアメリカであればアメリカに税金を納めることになっています。

それでもアメリカでは自国の強制力が及ばない別の国の金融機関に対して、アメリカ人が持つ口座情報を提供するためのシステムを、スタートさせたのです。

CRSは、アメリカが採用したFATCAという税制の枠組みをベースとして作られたものです。例えば、これまでは居住していない国でも、パスポートがあれば簡単に口座を開設し、莫大な資産を隠しておくことが可能でした。

しかし、これからは現地主義の国々でも、居住していない国で銀行口座を作る時に、居住国(本来税金を納めるべき本国)の身分証明書などが必要となります。

さらにCRS参加国同士であれば、居住国と居住していない国同士の銀行データが、それぞれの国の税務当局を通して相互共有されます。

海外に散在させておいた資産のデータも、税金を納めるべき居住国にしっかり届くシステムを導入することで、違法な脱税を防ぐことができるのです。

海外で投資やビジネスを行うとどういう影響があるか

海外で投資やビジネスを行う際、CRSの存在はどのような影響をもたらすのでしょうか。CRSに参加している国同士では、報告対象となるものは現金のみの預貯金だけではありません。

有価証券をはじめ、一定の保険や信託、組合などの契約に基づいた出資・投資も含まれます。つまり海外口座で投資を行っていた場合、その分配金や運用収益なども報告義務が発生します。

さらに提出義務や記載に誤りがあるなど、何らかのミスが合った場合、過少申告課税・無申告課税の加重制度があります。

もし虚偽の報告がなされた場合、また国外財産調書を期限内に提出しなかった場合などは、懲役刑・罰金刑に処される可能性もあります。

アジアでCRSに加盟している国の一覧

CRSに加盟している国は、どれくらいあるのでしょうか。特に日本の企業や投資家が注目しているアジアでCRSに加盟している国をチェックしてみましょう。

CRS適用国は2017年度と2018年度に分かれている

CRS適用国は、CRSがスタートした2017年度に参加した国と、その翌年の2018年に参加した国とに分かれています。

2017年度のCRS適用国は全部で55カ国と地域

2017年度のCRS適用国は、全部で55の国と地域です。
アジアで加盟している国をピックアップしてみましょう。

・インド
・韓国

意外と少ないですね。参加している多くの国と地域は、イギリスなどの海外領土になっている島国などで、スタート年はアジアの大きな国はあまり加盟しなかったようです。

2018年度のCRS適用国は全部で46カ国と地域

2018年度のCRS適用国は全部で46か国の国や地域でした。それではアジアで加盟している国は、どれくらいあるのでしょうか。西アジアに含まれる中東も合わせてピックアップします。

・バーレーン
・ブルネイ
・中国
・香港(中国)
・インドネシア
・イスラエル
・日本
・クウェート
・マカオ(中国)
・マレーシア
・パキスタン
・カタール
・サウジアラビア
・シンガポール
・トルコ
・アラブ首長国連邦

アジアでCRSに加盟していない国の一覧

アジアでCRSに加盟していない国はどれくらいあるのでしょうか。先にご紹介した加盟国の少なさを考えると、かなり存在すると考えられますね。

世界中で100カ国程度が現在も未加入

現在、日本が承認している国は全世界に196か国あります。この中には日本も含まれています。

しかしCRSに加盟していない国は、まだまだ100か国程度存在します。つまり、国々の約半数が加盟しており、約半数が加盟していない状態ということですね。

アジアでCRSに加盟していない国

それではアジアでCRSに加盟していない国には、どんな国々があるのでしょうか。一覧で見てみましょう。
・アフガニスタン
・イラク
・イラン
・ウズベキスタン
・オマーン
・カザフスタン
・カンボジア
・キルギス
・シリア
・スリランカ
・タイ
・タジキスタン
・台湾
・北朝鮮
・トルクメニスタン
・ネパール
・パレスチナ
・バングラデシュ
・東ティモール
・フィリピン
・ブータン
・ベトナム
・ミャンマー
・モンゴル
・ヨルダン
・ラオス
・レバノン

※2020年に、モルディブがCRS参加予定

税金の安い国・タックスヘイブンで海外投資するメリット

税金の安い国やタックスヘイブンで海外投資をする企業や個人にとって、CRSの存在は脅威と言えます。それでは、税金の安い国やタックスヘイブンで海外投資をするメリットにはどんなものが挙げられるでしょうか。

タックスヘイブンとは税金が著しく安い・免除される地域

タックスヘイブンとは、法人税や所得税といった税金の税率が、日本や欧米諸国と比較して極端に安い国や、免除される国、地域を指しています。

「タックスヘイブン」ではなく「タックスヘブン」、つまり「税金天国」と勘違いしている方が多いのですが、正確には「ヘイブン」、つまり「避難所」という意味があります。

日本語では、タックスヘイブンのことを租税回避地と呼ぶ事もあります。タックスヘイブンには全世界に点在し、全世界の税制が厳しい国から資産が集まっています。

タックスヘイブンの中には、パナマ文書で注目されたケイマン諸島も含まれていましたが、2017年にCRSに加盟しています。

投資で得た利益を税金で減らす事が無い

税金の安い国やタックスヘイブンに資産を避難させると、投資で得た利益にも税金がかからなかったり、非常に税率が安かったりします。

たとえば投資で得た利益に対して、日本では一般的に20%が課税されます。しかし非常に税率が低い国で口座を作り、そこで投資を行えば、税金による利益の目減りを抑えることができるのです。

子会社の設立をする事で利益を守れる

税金が安い国には、口座を作って節税するだけがメリットではありません。たとえば法人の場合、子会社そのものを設立することで、法人税なども低く抑えることができます。

法人を運営するためにはさまざまな税金がかかりますが、そもそも税率が安く、さらに税金や金融規制がゆるい国に子会社を設立することで、大きな節税につながります。

またタックスヘイブンには、法人を新たに設立したり、運営したりていくことに関しても寛容で規制がゆるい国もたくさん存在します。

逆に世界中の企業や投資家・資産家の資産が集まってくるため、秘匿性が高いというメリットもあります。

より多くの資産を投資する事ができる

より多くの資産を投資したいと思っても、税金のことを考えるとためらってしまうという方は少なくないでしょう。

NISAや積立NISA、iDeCoなどが登場しても、上限や条件などがあり、多額の資産を低い税金で投資できるというわけではありません。

しかしタックスヘイブンや税金の安い国を足場とすることで、投資による利益にかかる税金も節税することが可能となるのです。

税金の安い国・タックスヘイブンで海外投資するデメリット

税金の安い国やタックスヘイブンで海外投資をすることには、デメリットもあります。その点をしっかりチェックしておきましょう。

その国の政治的情勢が影響する事

税金の安い国やタックスヘイブンの中には、情勢が不安定という小国も少なくありません。そのため、その国の政治的情勢が、金融に大きく関わることもあります。

たとえば軍事クーデターや金融崩壊などが起これば、資産が戻ってこない、というリスクもあります。日本国内では保障されて当然の事態でも、海外、特に情勢不安定な国では通用しないことがほとんどです。

投資情報が流出するとイメージが悪くなる

みなさんも記憶に新しい「パナマ文書の流出」は、多くの投資家や資産家たちを震撼させました。日本人にもおなじみの名前がそこに記してあったことで、国内でも大きなニュースになりましたね。

基本的に秘匿性は高いのですが、今はネットで世界中がつながっており、情報流出がどこでいつ起きるか分かりません。万一タックスヘイブンでの投資情報が流出してしまったら、「あまりフェアではない方法で節税していた」というイメージが植えられてしまう可能性があります。

節税しながら海外投資する時の注意点

節税をしながら海外投資で資産を増やしたい、と考えている方も多いでしょう。そんな時の注意点を押さえておきましょう。

二重課税

海外投資をした場合、居住地と源泉地の双方で課税されてしまう可能性があります。二重課税の危険性です。

課税回避を行う

節税をしながら海外投資を行う場合に必要なのが、課税回避に関する知識です。課税回避とは、一般的な節税とは少し違います。

課税回避とは、租税回避ということもある特殊な節税方法です。税法に引っかからないように課税対象となる利益や財産を「あえて隠す」ことは脱税行為。犯罪になってしまいます。

しかし課税回避は、税法で定められていない、もしくはまだ税法が想定していない「法律の穴」を利用して、節税する方法です。

税金は、税法で定められているものだけを徴収するという「租税法律主義」をモットーとして徴収されています。

そのため、税法が追い付いていない穴を利用することで、税法によって裁かれることはなくなります。つまり、脱税にはならないのです。

二重課税を回避するための課税回避の制度

二重課税を回避するために知っておきたい、課税回避に関わる制度をご紹介します。いろいろと知識を得ることで、さまざまなケースに対応することが可能になります。

外国税額控除

海外で得た利益に関する税金に対しては、外国税額控除という制度が活用されます。こちらをしっかりチェックして二重課税されないように注意しましょう。

国外所得免除

日本では依然から外国税額控除があり、二重課税を防ぐために役立っています。しかしヨーロッパ各国で採用されてきた国外所得面税方式も一部取り入れられるようになってきました。

海外で得た所得に対して、課税免除にするという方式です。今後も外国税額控除と国外所得免除に関しては逐一チェックしていく必要があります。

租税条約

租税条約とは、二重課税を防ぎ、脱税などを防止するために、国同士の間で結ばれる条約です。アメリカを皮切りに、日本は多くの国や地域と租税条約を結んでいます。

源泉所得税

源泉所得税とは、企業側が従業員側から源泉徴収し、従業員に代わって納める所得税です。源泉所得税に関しては、会社を法人化し、自宅の名義を法人にすることなどで節税が見込めます。

過小資本税制

外資系企業が日本で法人を設立したとき、本国の親会社から資金を調達することはよくあることです。

その際法人実効税率が低い訓生親会社から日本の子会社にお金を貸し付け、利息支払いを行うことで、節税につながります。

しかし海外の親会社に支払う利息には限度額があり、それを超えると過少司法税制と言って損金に算入されなくなってしまいます。この点に注意しましょう。

タックスヘイブン税制

タックスヘイブン税制とは、タックスヘイブンに節税のために子会社を設立することを規制するための規制です。子会社を設立する際は、定められた基準を満たさなければなりません。

移転価格税制

移転価格税制とは、節税のために海外に設立した子会社との取引で生じる利益を操作することで、所得を海外に移転することを規制するための税制です。こちらにも注意が必要です。

【まとめ】海外投資の成功のカギは税金対策にある!

海外投資の成功のカギは、税金対策、節税対策にあります。タックスヘイブンに子会社を設立するなどの方法はよくとられていますが、近年タックスヘイブンにはCRS参加国が増えつつあります。

また、海外投資の税制の抜け道も、どんどんふさがれつつあります。投資をするなら、まだ租税回避の道が残されている今がチャンスと言えるでしょう。

実はフィリピンなど多くの日本企業が進出していて、今後伸び行く経済的に成長途中の国が、まだCRSに参加していなかったりします。こうした国での海外投資なども視野に入れて、とことん節税できる海外投資の道を探っていきましょう。