BPOの歴史

2019年4月17日フィリピン金融

1.BPOの歴史

BPOを利用する企業が年々増えています。例えば、給与のデータ入力はマニュアルが完備されていれば誰でも業務を行うことが出来ます。このような代替性がある労働を社外にアウトソースし、依頼した企業は人員や費用を割くことなく、望んだ業務の成果だけを享受出来る仕組みがBPOです。そしてBPO企業は業務を細分化し最適なオペレーションに組み替えることが出来ます。そのため非コア事業のランニングコスト削減にもBPO展開は有効です。

このBPOが始まったのは欧米の企業がコールセンターで働く人員を安価な給与で雇える地域を国を探し始めた1990年頃です。産業が発展した先進国の人件費より、これから経済が発展する国で雇用する方がコストが安く、実際に海外に地元の従業員で運営するコールセンターを設けると自国より安いコストで業務が行えました。企業は業務を外部企業へアウトソーシングをすることで人件費のコストダウンを目指し始めました。

特にインドはアメリカやイギリスの企業からBPO展開を受けて発展した国として有名で、コダックなどのアメリカ企業がインドの人件費の安さ注目し、コンピューターのデータ入力を依頼したことがインドBPOのファーストケースと言われています。

インドでBPOが発展したのには幾つかの理由があります。まずインドの公用語はヒンディー語ですがビジネスでは英語が使われ、欧米企業とコミュニケーションが取れる人材を確保することが容易でした。またインドの英語の普及率は欧米の人が話をしても分からないレベルの高さにあります。欧米企業に望ましいコミュニケーションに支障がなく英語が話せる人員が豊富なインドはBPOを展開するのに理想的な場所でした。

加えてIT企業が集まるアメリカのシリコンバレーとインドは12時間の時差がありました。とりわけ、IT産業はオンタイムでビジネスが世界中に展開され、開発などのイノベーションを生み出すスピードを早くしなければ競争に取り残されてしまいます。そのためアメリカのシリコンバレーで夕方まで業務を行い、夜間には地球の裏側にあるインドのBPO企業で業務を引き継ぐIT企業が増えていきました。

尚、インドの憲法で身分の差別は禁止されていますが、ヒンドゥー教の影響で身分によって職業の制限があるカースト制度の影響がまだ残っています。そのためIT産業はカースト制度が想定していない新しい仕事として、意欲と能力がある若者たちが集まる場所となっています。

このように海外の企業にBPO展開をすることが効率化につながると、欧米以外の産油国や経済大国となった中国企業もBPOに取り組むようになり、インドの人件費や物件費は徐々に高騰することになります。企業は望む結果がBPO展開をすることで得らることを確信し、インドのような海外でBPOを展開が出来る他の国を探し求めました。

加えてBPO事業により国内総生産が高まるため、インドの成功事例を参考に他のASEANなどの発展途上国が海外からのBPO誘致を競うようになり、国を支える新たな産業としてBPO事業が認知されることになります。人件費や物件費でアドバンテージを持つ国はBPO事業の候補地として発展したいと考えるようになりました。そのため世界中の各地で、今後も企業と招致する国家の双方に取って思惑がウインウインの関係となり、BPOは成長産業として拡大することが予想されます。

2.今現在BPO事業が盛んな国

世界の各国でBPOを誘致する動きが盛んになっています。その中で、コールセンター事業のシェアが2010年以降1番高いのはフィリピンです。日本に比べると10分の1程度の安い労働力が魅力的でBPO展開が進んでいます。安い労働力といってもフィリピン国内ではBPO事業の給与水準は高く、成長する国内産業としてフィリピン国内の優良な勤め先として応募が集まっています。

またフィリピンは英語が話せる人材が多くコミュニケーションが容易に取れる為、日本だけではなく世界中の企業もコールセンターを設けました。例えば、1992年にコンサルティング会社のアクセンチュアグループがフィリピンにコールセンターを設置したケースだと、2000年の同社の売上げは2012年までに約60倍に急成長して成功しています。

フィリピン政府も国家として海外のBPOを推進する方針であり今後も発展することが予想されています。フィリピンでは海外への出稼ぎ労働者からの送金が国の経済を支えていましたが、コールセンター事業が発展しBPO事業がGDP比率でこれを抜きました。BPO事業は国内の基幹産業として定着したと考えられます。

ベトナム

1995年以降にASEANに加盟したベトナムは新たなるBPO企業が活躍する地域として人気が高まっています。特に、勤勉な国民性であるために向学心が高い人材が確保できることが魅力です。働きながら夜間大学で学ぶ人も多いベトナムの成人識字率は95%程度でASEAN平均水準の実力を持っています。このため、教育を行い易い人材を採用することが出来ます。

また、IT利用に必須である電気インフラへのアクセス可能な人口比率は99%と高く、他の100%のシンガポールなどには及ばないですが、BPO事業を始める環境は整っています。

そして、効率的なBPOを行うためには現地人材のパーソナリティーを把握することが必須ですが、ベトナムは特に反日感情を持っていないので、政治的な対立の高まりで事業が停滞する可能性が少ないです。海外の会社と現地スタッフが感情的に対立をすると、従業員の退職や怠業が引き起こされます。特に日本企業にとってメリットと言えます。

中国

製造業が中心となってBPOを展開しているのが中国です。データー入力やバックオフィスの業務委託が日本に比べると人件費は割安です。また、漢字に慣れているので日本企業とコミュニケーションが取れる人材を確保出来るのが魅力です。とりわけ日本企業のBPO盛んなのは大連地区と言われます。大連地区は成田空港から直行便で3時間で到着できる位置にあり、また日本語が話せる中国人の数も多くBPO事業の拠点として発展しました。

但し、ASEAN諸国と比べると中国の人件費は割高となりますので、単にコストを下げる目的でBPOを行うのであれば、他の国で行うほうが有利となるケースがあります。また、政治的な対立より反日感情が高まる可能性があり、デモやストライキに発展するとビジネスが出来ない事態となります。さらにBPO事業へ派遣する社員の身が危険に晒される可能性もあります。

3.なぜその中でもフィリピンのBPOが注目されるのか?

フィリピンでBPO事業を展開するメリットに人件費等が安く抑えられることが考えられます。日本に比べるとおおよそ3分の1程度の物価と言われ、大学初任給与は23,000円から35,000円であり、日本の大学初任給の平均203,400円(2016年度)に比べると、おおよそ10分の1です。首都マニラやリゾート施設が多いセブから離れた地区の物価は更に安くなります。

また、フィリピンでは海外に比べると低コストで優秀な人材を確保できる可能性が高くなります。なぜならフィリピンのコールセンターで貰える月給は25,000円~54,000円程度が平均であり、一般的な月給とされる35,000円より高水準です。そのため、海外のBPO事業で働きたいとは考えるフィリピィン人は多く、優秀な人材が集まることになります。

次に、日本企業にとっては、時差が1時間と少ないことがメリットです。例えば総務と言ったバックオフィスをフィリピンのBPO事業に委託をしても、日本での営業時間内にフィリピンのBPO事業とオンタイムでコミュニケーションが取れます。また、東京からの直行便で5時間程度でマニラに到着をするので、会社から人材を派遣をするのにも適しています。

そして、フィリピンの人材は英語が話せるため、現地スタッフとのコミュニケーションが容易であり世界中の企業が進出しています。フィリピンはアメリカの植民地であった歴史があり、英語を使うことが日常生活に浸透しています。また小学校から大学までの授業は英語で行われているので、英語を使ったコミュニケーションをする事が当たり前になっています。BPOを行う為には、マニュアル等を理解して業務を行う必要がありますので、意思疎通に問題が無く出来るのは大きなメリットです。

さらに、フィリピン人は明るい性格で、争いごとを好みません。礼儀正しく接すると熱心に仕事をします。また、貯蓄傾向が低く、給料日には買い物をする人がショッピングモールに殺到します。つまり個人消費が順調であり、海外企業にとっては現地より高い給与を提供することで勤労意欲が高い人材を確保し易い環境となります。

最後に、フィリピンの国民90%はカトリックです。また、異文化を受け入れる気質を持ち合わせています。フィリピンはスペインやアメリカの植民地だった歴史があるので風習や文化に影響が残っています。また、中国系のフィリピン人も住んでいるので、欧米、中国の文化が反映されています。そのため、世界中の企業が進出しても反発することなく上手く融合しています。

BPO展開するのにこれらの好条件が揃っているフィリピンは成果中の企業から注目を集めています。これkらBPOを始める企業の候補地としても相応しいポテンシャルを持っています。

4.フィリピンでBPOを構える日系企業、外資系企業

実際にフィリピンでBPOを構え、成功した企業をご紹介します。

[東映アニメーションフィリピン]

フィリピンで古い歴史があるBPO企業は東映アニメーションフィリピンで1986年に設立され、現在は色彩だけではなく、原画も含んだ画像の製作工程を担当しています。従業員は160人で、人気アニメのワンピースなども製作している会社です。フィリピンで東映アニメの70%程度の作業が行われています。

アニメーションを作る工程は細かく役割分担があり、それぞれ技術が必要です。そのため人材育成のためにコストと時間を投資する必要があります。また、人材不足と高い賃金がネックとなり、日本でアニメーションスタッフに対する安い賃金が労働問題として取り上げられたことがあります。

またアメリカのアニメーションの90%はアジアを拠点に作られており、世界中から優秀なアニメーターが集まっています。日本国内では優秀なアニメーターを確保するのも一苦労ですが、原画作成スタッフ、背景美術スタッフから、監督やプロデューサーまでの様々な人材をフィリピンで見つけることができます。

そのため、アニメーション作りをオフショアで行うメリットは非常に高く、東映アニメーションフィリピンの事業は成功事例として認知されています。今後もフィリピンでアニメーション事業のBPOは拡大されることが見込まれています。

[丸紅]

総合商社の丸紅は安い人材で優秀な人材を確保できる為にフィリピンでのコールセンター事業を早くから注目していました。そして、丸紅のグループ会社であるテレマーケティングジャパンは2012年にフィリピンBPO大手の[PacificHub」社とサービス提携を合意しました。

多言語国家であるが英語力が高い人材が豊富なフィリピンでのコールセンター事業は拡大し、2010年にはこれまで一位であったインドを抜き世界トップクラスの市場規模となっています。その中で実績を残すBPO企業と提携することで、テレマーケティングジャパンは顧客のニーズに対して高品質なサービスを作り出す人材をマネージメント方を提案することが出来るようになりました。

テレマーケティング社は2018年にマニラに新しくサービスセンターを設立し、フィリピンのBPO企業と連携することで事業の間接業務を受注できるように規模を拡大することを計画しています、国内地方拠点で人事や営業事務などの営業受託を行うことで顧客の効率性向上とコストの最適化のニーズに応える事ために、フィリピィンBPOの強みをハイブリッとさせた成功事例と言われています。

[イシハラ株式会社]

地方の優良企業がフィリピンのBPO事業に成功した代表事例は、愛知県豊橋市に本社を置く総合建築業者のイシハラ株式会社です。建築に必要な工程である設計で利用するCADを使った日本の住宅向けの建設図面や介護リフォーム工事用の図面を子会社のフィリピンBPO事業で受注しています。

CADは手書きによる建築図面より修正が容易で、3Dモデルなどで全体像を共有できるメリットがあり、建設、インテリア業界では重宝される技術です。また少子高齢化が進む日本では住宅で介護が必要な人に向けた、手すり等の設計にも使われCADを使うニーズが高まっています。

そのため、株式会社イシハラでは日本での建設業者のノウハウを活かし、フィリピンで日本向けの建築図面をCADで作成出来るBPO事業を設立しました。そして株式会社イシハラでは大学で工学系の学部を卒業した人材を雇用し、日本語が話せるスタッフを育成するために社内研修を充実させています。フィリピンの時差が日本と1時間程度しかないため、フィリピンのスタッフと日本語でやり取りが出来るので現在多くの日本企業から業務を請け負っています。

5.今後、BPO事業の予想される展開

コールセンター事業が中心となりBPO事業のマーケット規模は拡大しましたが、会計、給与処理などのバックオフィスで担当する業務を一括して任せる企業も増えてきました。そのため、単なる外注先ではなく、最先端のIT技術や法規制の知識を備えたBPO企業がノウハウを蓄えて成長しています。

最近ではBPOは企業の戦略的なオプションとして考えられるようになっています。進化したBPOは税務、知的財産の法律関係を企業に適した解決方法を生み出すパートナーとして認知されています。そして新しいルールが度々作られる業務分野のスペシャリストは社内で養成するのには時間とコストが掛かって難しいため、専門性を有するBPO企業を頼ることでベストのソリューションを見つける企業が増えています。

さらに、担当していた業務を処理するだけではなくて、より複雑で高度なアウトソーシングを引き受け、いわば企業に更なる付加価値を提供するBPO事業が登場しています。これはKPO(ナレッジ・プロセス・アウトソーシング)と言われ、単純な業務委託やバックオフィス業務を担当するのでは無く、財務分析や法務サービスといった知識集積型の業務をお行うBPOです。

このKPOでは、弁護士、会計士などの専門職を従業員として雇い、企業のコンサルタントとして最適な解決策を提供することを目的としています。これによって、企業自体のコア業務に注力できる以外に、専門性が高いソリューションを手に入れることが出来ます。特に日本企業では優秀な人材を確保するのが少子高齢化が進むことで難しくなっており、企業戦略としてKPOと連携をする場合も増えています。

人材不足で悩む日本のような先進国は今後BPO、そしてKPOを拡大することが予想されます。またASEAN地区ではBPO企業の競争も激しくなっており、数多くのBPOは生き残るために進化をしなければいけません。これらのことからBPOはまだまだ成長していくと考えます。

6.日系企業もBPO展開を視野に入れればビジネスチャンスが大きく広がる

BPOは低コストで優秀な人材を確保できる経営戦略として世界中に広がっています。4人に1人が65歳以上の日本では、新しい技術を取得する人材を確保することが年々難しくなっています。BPO展開を日系企業が取り入れることで、投入するコストに比べると良質な労独力を確保することが出来るので、これから人手不足に悩む企業がBPO展開を始めることが考えられます。

BPO事業が担う業務は代表的なコールセンターに留まらず、企業の総務、会計、人事などのバックオフィスを行うことが出来ます。そしてフィリピンが加盟するASEAN地区は日本と時差が少なく、スタッフへ日本語を教えているBPO企業もあり、日本の営業時間内に現地スタッフと込みコミュニケーションをとる事が可能です。そのため、日本国内で拠点を構える様々な企業がBPO展開をする環境が整っています。

BPO展開で得られる業務のレベルは日本国内の企業と質はそれほど変わりません。ですのでBPO企業へ思った通りの業務内容を伝えることが重要になってきます。フィリピンを代表するASEAN地区のBPO展開が進んでいるのは、この地区の文化や国民性が日本に通じると感じるからです。一緒に仕事を進めていくと、フィーリングが合ってお互いの人間関係が良くなることに気が付きます。ポイントとなるコミュニケーションに支障が少ないことが最大のメリットです。

また、企業経営は戦略の立案等のいわゆるコア業務に集中したいところですが、ビジネスシーンは目まぐるしく変化します。IT技術は日々進化し、ビジネスを取り締まる法律、会計基準も新しくなって行きます。そのため、従業員を教育することが重要になりますが、ノンコア業務も習得するのに必要なコストと時間も増やさなければいけないのが現状です。BPO展開をすることで、ノンコア業務を担当する社員の育成自体をアウトソーシングすることになり企業の効率性は高まります。

ですので、企業の効率性を高めるBPO展開は、これから日系企業にとって重要な戦略となると考えます。慢性的な人材不足や目まぐるしく変化するノンコア業務の処理にBPO展開は効率性を生み出します。既にIT分野でのソフトウェア開発などを日本企業の40%程度の日本企業が海外で開発をしていると、独立行政法人情報処理推進機構(IPA)が調べています。BPO展開が出来る業務は広がりを見せていますので、BPO展開をすることで日系企業がビジネスチャンスを掴む可能性が広がると言えるでしょう。