【今、アジアで起業が熱い!】日本ではありえないアジア各国の優遇措置

2019年4月17日アジア金融

安価な労働力や平均年齢の若さ。消費と収入の拡大で経済成長を続けるアジア各国が注目されています。拡大する市場は投資の格好のチャンスです。また、外資を積極的に誘致する優遇措置も魅力的。ここでは、海外進出を検討する方むけに、注目度の高いアジアの国をピックアップ。各国の税制優遇措置や法人税、また海外進出の注意点についてご紹介します。

事業の拡大や起業を考える人にとって、成長を続けるアジアの国々は魅力的な投資先です。

  • 人口の6割が30歳以下で世界第4位の人口を抱えるインドネシア
  • 過去20年間黒字の経済成長を続けるベトナム
  • 英語が公用語であり比較的人件費が安価なフィリピン

など、海外進出に有利な環境が整っている国が多いのがアジア諸国の特徴です。
日本の税制と比較して税率の低い法人税や優遇措置も、事業投資する際の有益な条件になります。

しかしながら、海外進出では優遇措置だけではなく、外資の規制も理解する必要があります。なかには、ネガティブリストと称して外資の参入を規制する分野を持つ国も。

今回は、日本からの進出率が上昇するタイ、シンガポール、インドネシア、ベトナム、そしてフィリピンの5か国の外資優遇措置をまとめました。海外起業や事業投資の国を検討する際の参考にしてください。

1.アジアへの企業進出、起業が増えている

外務省の『平成30年度海外在留邦人数調査統計査』 によると、海外における日系企業の総数(拠点数)は7万5,531拠点で、前年より3,711拠点(約5.2%)の増加しています。このうち、アジア各国に拠点を置く日系企業が占める割合は約7割に上ります。

進出する日系企業が一番多いのは、中国です。そしてアメリカ、インドと続きます。拠点数の多い上位12か国のうち、9か国をアジアの国々が占めています。

中でも日系企業の伸び率が大きいのは、タイです。2016年から17年の間に、拠点数は1783件から3925件と急成長しています。また、上位12か国に占めるアジア諸国のうち、インド、インドネシアベトナム、フィリピンは企業数が上昇傾向。逆に、マレーシアは1362件から1295件と4.9%減少しています。

日系企業進出率の高いアジア5か国の過去5年間を比較すると、上昇率は以下のようになっています。

国別日系企業の推移(拠点数)
https://www.mofa.go.jp/mofaj/files/000368753.pdf
P58 https://www.mofa.go.jp/mofaj/files/000368753.pdf

この数年で、事業の投資先としてアジアの国に注目が集まっていることがわかります。
では、国ごとの優遇政策や法人税はどのようになっているのでしょう。上記のピックアップした5か国についてご案内していきます。

2.アジア各国の外資誘致などの優遇措置

日系企業の注目を集めるアジアの国の経済的・文化的背景、および外資にとって有利な優遇措置は何があるのか見てみましょう。

タイ

タイの経済成長率は、3%台で推移しています。過去には、自由貿易協定(FTA)の締結と外資の積極的誘致で、輸出と投資を中心に経済成長をしてきました。近年は観光業の回復や農作物の価格上昇など、民間消費は堅調に推移。また、日本の高島屋がバンコクに初店舗を出店、日本食レストランの店舗数が3,000店を超えるなど、日本とのかかわりが大きい国です。

タイの外資優遇措置

タイは業種別に、外資の投資奨励制度をととのえています。2018年時点で、投資委員会(BOI)に申請できる事業区分は以下の8区分127業種です。

  • 農業および農作物(22)
  • 鉱業、セラミックス、基礎金属(17)
  • 軽工業(11)
  • 金属製品、機械、運輸機器(22)
  • 電子・電気機械産業(9)
  • 化学、紙、プラスチック(17)
  • サービスおよび公共事業(28)
  • 技術・イノベーション開発(1)

税制優遇措置には、法人税額の上限設定や法人税の免除が含まれます。適用される優遇措置は、区分と業種によってグループA1~A4 、グループB1、B2と6種に分類されます。

たとえば、タイのエネルギー省に認可されたESCO事業(省エネの提案や支援を行い、コスト削減の一部を報酬として受け取るビジネス)にはA1が適用 。10年間法人税が免除され、さらに機械類に対する輸入関税の免除などの優遇措置が受けられます。

シンガポール

国土が東京23区ほどの大きさといわれるシンガポールには、世界の富裕層や多くの外資が進出しています。英語が公用語の一つであり、ビジネスシーンで英語を活用できるのも海外進出を考える日本人にとって魅力的です。国策としてインフラ整備を推し進めている点も、外資誘致を促進する要因となっています。

7.8 https://www.boi.go.th/upload/section7_en_wt_link.pdf

 

シンガポールの外資優遇措置

シンガポールは経済開発庁(EDB:Econnomic Development Board)が外国企業が申請できる投資優遇措置の窓口となっています。認定を受けた企業は、法人税率の軽減など税制優遇措置を受けることができます。

【優遇措置の例】
・パイオニアインセンティブ(Pioneer Certificate Incentive:PC)
政府認定された企業が、最大5年にわたって軽減税率が受けられる制度。

・開発・拡張インセンティブ(Development & Expansion Incentive:DEI)
パイオニアインセンティブの認定を過去に受けていた企業や、認定を受けられなかった企業を対象とする制度。事業支出総額やプロジェクトの質などで審査され、適用企業は5%または10%の軽減税率となる。

各優遇措置の詳細は、EDBのウェブサイトで確認できます。日本語表記のページも準備されており、情報を集めやすくなっています。

また、キャピタルゲイン課税がないことは、投資家にとって大きな魅力です。事業売却で得た利益が課税対象とならないため、海外投資の撤退戦略までふくめて有利に考えることができます。

ただし、本業所得とみなされる性質のものは法人税の対象となります。たとえば、株式トレーニング業者が売買する株式で得た利益は、法人税の課税対象とみなされます。

ベトナム

高い経済成長率を誇るのがベトナムです。ベトナムの実質GDP成長率は7.1%。日本でいうバブル期のような経済成長率を維持しています。また、ASEANの中でも3番目に多い人口を抱え、さらに平均年齢が28歳と活力ある市場です。

ベトナムの外資優遇措置

外資を国別にみると、日本から進出する企業の割合が最も多くを占めます。

2014年投資法にもとづき、外資の奨励分野と奨励地域に進出する企業に対し優遇措置が設置されています。 適用される奨励措置は、通常より低い法人税率の適用や、法人所得税の減免など。

https://www.jetro.go.jp/ext_images/_Reports/02/2018/959bafc2e1b56468/sg201809.pdf
https://www.jetro.go.jp/world/asia/vn/invest_03.html

たとえば、優遇措置を与えられた経済特区やハイテク地域に投資する事業、もしくはハイテク・先端技術分野に関する企業は、法人税の税率が10%と最長で30年間の軽減税率を受けられます。

また、投資プロジェクトを実施するための固定資産税や原材料に対する輸入税の免除があります。

インドネシア

ベトナムに続き高い経済成長率を誇るインドネシア。2018年は5%台で推移し安定した経済成長をとげているといえるでしょう。ASEAN諸国では1位、世界的にみても4番目に人口が多い国です。平均年齢が28歳以下と若者が多く、世界最大のイスラム国家でもあります。日系企業の多くは、ジャカルタに進出しています。

インドネシアの外資優遇措置

インドネシア政府は、12地域の経済特区を設定し対象地域で事業を展開する企業に優遇措置を実施しています 。対象となる地域と事業の組み合わせが決まっており、例えばジャワ島ではタンジュンレスンで観光産業が優遇措置の対象になります。税務上の優遇や、減価償却期間の短縮などが適用されます。

また、タックスアローワンス制度では、特定の事業分野や特定地域への投資に対して優遇措置を実施。投資額の30%までを年5%ずつ、6年間にわたって課税所得から控除できるなど、税制優遇措置が認められています。

フィリピン

平均年齢が24歳と若く、活気ある市場がフィリピンです。ここ数年の経済成長率は6%台で推移し、堅調な経済発展を遂げています。一方で、ほかのアジア諸国と比較して低めの人件費などコストを抑えられる労働環境があります。英語が公用語であり、かつ日本との距離が4~5時間と移動時間が短い点も、海外進出しやすい国だといえます。

フィリピンの外資優遇措置

国内産業への投資を優先するために、各種優遇措置が設置されています。なかでも、PEZA(Phillipine Economic Zone Authority)と呼ばれるフィリピン経済特区制度は、法人税の免除や軽減など外資が受ける恩恵の大きい制度です。

PEZA登録企業になるには、輸出企業やフィリピンで生産されていない製品の製造を行うパイオニア企業など、いくつかの指定タイプがあります。適用される優遇措置の例は、以下の通りです。

https://www.jetro.go.jp/world/asia/idn/invest_03.html
https://www.jetro.go.jp/ext_images/jfile/country/ph/invest_03/pdfs/ph8B010_yuuguusochi.pdf

  • 法人所得税の免除:事業タイプにより、3年~6年の法人所得税の免除をうけられる。
  • 特別税の適用
  • 関税などの免除
  • 輸出税の免除
  • 国産資本設備に対する税額控除

3.アジア各国の法人税まわり

日系企業の進出が伸びているアジアの5か国の法人税を比較してみましょう。各国の基本法人税率は次のようになっています。

日本の基本法人税率が23.2%です。上回っている国もありますが、優遇措置により免税や軽減税率が適用されると、実効税率はさらに低くなります。

タイ

法人税率の計算は、通常の事業経費や減価償却費(5%~20%)を総収入から控除することが可能です。税務上の欠損金は、5事業年度の繰り越しが認められており、当該期間の課税対象利益と相殺できます。

また、資本金が500万バーツ以下で、収益が3,000万バーツ以下の中小企業には累進課税が適用されています。

  • 30万バーツまで 0%
  • 30万~300万バーツ 15%
  • 300万バーツ以上 20%

シンガポール

法人税率17%、優遇制度を利用すれば実効税率はさらに低く抑えられます。

シンガポールの法人税率計算は、部分税額免除制度(Partial Tax Exemption)を導入しています。最初の1万シンガポールドルの75%、および次の29万シンガポールドルの50%が免税対象です。
https://www.jetro.go.jp/world/asia/th/invest_04.html
https://www.jetro.go.jp/world/asia/sg/invest_04.html

また海外起業を狙うスタートアップなら、下記の要件を満たせば設立3年間は課税所得の最初の10万シンガポールドルは免税、次の20万シンガポールドルは50%免税となります。

【新スタートアップ会社税額免除の条件】

  • シンガポールで設立、税務上もシンガポール居住法人
  • 株主が20人以下
  • 全ての株主が個人、もしくは個人株主が10%以上の株式を保有
  • 主たる事業内容が、投資会社や投資用不動産の開発ではないこと

加えて、すべての企業に賦課年度(Year of Assessment, YA)ごとに法人税の減税があります。2019賦課年度は、1万シンガポールドルを上限として法人税額の20%が減税されます。

ベトナム

ベトナムの法人税率は通常20%ですが、条件により低い優遇税率が適用されます 。また、100%の免税期間および、免税期間後には50%の減税期間があります。

たとえば、教育訓練、職業訓練、医療、文化、スポーツもしくは自然環境保護事業への投資を行うプロジェクトは、10%の優遇税率が適用されます。優遇税率の適用期間に上限はありません。課税所得発生から4年間は100%の免税となり、免税期間終了後9年間は50%の減税が適用されます。

インドネシア

通常の法人税は25%ですが、以下の条件があてはまる企業には軽減税率が適用されます。

  • 株式の40%以上を公開している上場会社は、20%の法人税率
  • 年間売り上げ500億ルピア以下の企業は、48億ルピアまでの課税所得に対して、法人税率は12.5%

また、タックス・ホリデー制度 と称して、貴金属や航空部品、通信機器といった指定のパイオニア分野で新規投資を行う企業に5年~20年にわたり、投資額に応じて法人税を50%または100%減額しています。ただし、対象となるのは投資額5,000億ルピア(約39億円)以上の大型投資です。

フィリピン

フィリピンの現在の法人税率30%です。しかし、今後2021年から2029年までの間に、毎年1%ずつの引き下げが予定されています。最終的には、20%まで引き下げる改正法案の審議中です。これが実現されれば、ほかのアジア各国とならんで低い法人税率の国になります。

P32 https://www.mizuho-ri.co.jp/publication/research/pdf/invest/VN1810.pdf
https://www.jetro.go.jp/world/asia/idn/invest_04.html
https://www.jetro.go.jp/world/asia/idn/invest_03.html
https://www.jetro.go.jp/world/asia/ph/invest_04.html

課税所得の方法は、法人の区分によって異なります。

各国の法人税率を比較しつつ、進出する事業や投資の分野で優遇税率や減税の措置があるかどうか確認しておきましょう。

4.アジア各国へ起業進出、起業する際に注意すること

海外進出というと、文化や慣習の違いを気にします。たしかに、円滑な事業展開に異文化の理解は重要です。しかしそれ以外に、データであらかじめ予測できる要素を事業計画に反映させることが重要です。

労働コストの上昇

JETROの『2017年度 アジア・オセアニア進出日系企業実態調査』 によると、海外で事業を展開する日系企業が感じる経営上の問題点として、以下のポイントをあげています。

  • 従業員の賃金上昇
  • 品質管理の難しさ
  • 原材料・部品の現地調達の難しさ
  • 人材(技術者)の採用難
  • 通関等諸手続きが煩雑

働く人の就業意識の違いや、インフラの違いも考慮しなければいけません。また、「人件費が安い」イメージがあるアジアでも、各国によってコストに差があることを頭に入れておきましょう。

たとえば、JETROが公開しているデータに基づき、製造業での人件費を比較すると以下のようになります。


P33 https://www.jetro.go.jp/ext_images/_Reports/01/b817c68e8a26685b/20170085.pdf

人件費はシンガポールが一番高く、フィリピンとベトナムが安いことがわかります。経済成長を続けるこれらの国では、賃金は年々上昇傾向にあります。インフレ率を見越した事業・投資計画が重要です。

外国人労働者のビザ問題

事業内容によっては、コールセンターなど海外に在住する日本人を従業員に想定するものもあります。進出した先の自国民ではない外国人を雇用するには、その国のビザ制度を理解しておきましょう。

たとえば、タイでは39種の分野で外国人の就業が禁止されています。肉体労働、美容師、漆器製造などの技術職から、観光案内人や事務員、秘書など幅広い範囲です。また外国人一人につき、労働ビザの取得に会社の資本金払込額が最低200万バーツ(約700万円)必要になるなど、追加のコストが発生します。

労働ビザの取得に時間がかかったり、事業規模によって上限人数が決まっている場合も。事業規模を拡大するのであれば、日本人の従業員を派遣した上で管理者となってもらい、現場は現地スタッフを雇用する方法も多くとられています。

外国企業への規制(ネガティブリスト)

多くのアジア諸国で、ネガティブリストと称して特定の産業や分野へ外国資本の参入を禁止・もしくは制限しています。

一番規制が緩いのは、シンガポールです。国家の安全保障にかかわる公益事業、メディア関係など一部を除いて外資の参入にとくに制限がありません。また、国家の安全にかかわる特定の分野を除き、外国資本の100%出資が認められています。

各国の外資の規制は、JETROのウェブサイトからも確認できます。

5.フィリピンでの日本人企業進出、起業の成功例

最後に、実際に海外に進出した日本人企業は、どのような点で成功をおさめたのか。フィリピンでの事例を見てみましょう。

フィリピンでオンライン英会話の新規事業

英語学習者の間で注目されているフィリピンの語学留学。その先駆けともいえる、フィリピンとのオンライン英会話事業を立ち上げたのは、株式会社アンフープです。同社はもともと、静岡県で土木事業関連のソフトウェアを開発する建設システム企業でした。しかし、時代の流れをよみ、事業規模拡大のため考えたのが、オンライン英会話の新規事業を立ち上げることでした。

フィリピンを選んだ理由は、以下の3つです。

  • 人件費が日本の10分の1(進出当時)と安い
  • 英語が公用語で英語ネイティブのフィリピン人がいる
  • 日本との時差が1時間

PEZA(フィリピン経済区庁)の認可を受け、現地法人を設立。日本人社員と現地スタッフを抱え、いまでは在籍講師数450人以上、累計レッスン数100万回を突破するサービスに成長しています。

参照:JETRO フィリピン進出事例より

まとめ

日系企業に人気のアジア5か国だけを見ても、優遇制度には違いがあります。単純に法人税率を比べるだけではなく、海外進出や起業で利用できる優遇措置を把握し、外資の規制まで理解した上で進出計画を練ることが大切です。

さらに、将来的な賃金上昇やインフラ計画も考慮し、見通しを立てることが海外起業を成功させるポイントだといえるでしょう。