フィリピンのBPO事情

2019年4月17日フィリピン金融

フィリピンのBPO事業は今後も有望

世界のBPOの歴史とフィリピンの立ち位置

BPOとは(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)の略。企業の業務プロセスの一部を継続的に外部の専門的な企業に委託することです。欧米を中心とする多国籍企業の一部業務を請け負って代行することでインドやアジア圏を中心にBPO産業は広まりました。

2000年代に入るまでフィリピンはBPOで出遅れていました。フィリピンは財閥や地主に経済は寡占されていた歴史があり国内産業保護の政策で外資参入の障壁も高く雇用機会も少ない国でした。そのため伝統的にフィリピンでは英語が公用語でもあることから国外に仕事を求める人が多かったのです。

90年代のBPOの主役はインドでした。インドは英語が公用語のひとつでITにも強い国。例えばアメリカはBPOによって、インドとの時差を活用することで昼はアメリカ、夜はインド(インドは昼)で業務を進めるというという形態も流行でした。

しかしフィリピンは2000年代からコールセンターを中心にBPO産業を成長の柱と位置づけました。フィリピンにはインドと同様に英語が公用語、人件費も抑えられるためBPO先として成長できる要因がありました。フィリピンのBPO産業は成長が目覚ましく年平均で120%増という急成長を成し遂げました。2010年に入るとBPO事業の中核のコールセンター業務の市場規模でインドを抜いたことがニュースで話題にもなりました。フィリピンはインドに比べ訛りがあまりないため英語の音声を伴うサービスを提供する強みがありました。

2014年にはフィリピンの人口は1億人を突破。平均年齢が20代ととても若いのもフィリピンの強みでした。若い世代が多く英語も話せることに加え人件費も抑えられたためフィリピンのBPO
産業の成長はさらに加速しました。

フィリピンのBPO事業は国内の経済成長を牽引する産業にまでなっています。BPO事業はフィリピン国内の給与水準としては比較的、高く中間層の拡大にも貢献しています。フィリピンのBPO
事業はコールセンターのみならず様々な業種に広がっておりフィリピン国内の雇用も生み出しています。

フィリピンは高い英語力・安価な人件費・若い世代の層の厚さと世界的なBPOを積極的に活用するグローバリゼーション化という時代の後押しがあり世界のBPOセンターの地位を確立しています。そしてフィリピンのBPO産業にはまだまだ成長余地があります。

フィリピンのBPO事業

フィリピンのBPO事業は英語力の高さからコールセンターやカスタマーセンターの分野で急成長
しました。そしてインドを上回る音声サービスとしての地位をフィリピンは確立しました。しかし
フィリピンのBPOは音声サービスだけではありません。

フィリピンのBPO事業には医療情報の管理、IT産業のオフショア開発、アニメーション、オンライン英会話などの教育部門など多岐に渡ります。

実はフィリピンは欧米圏のBPOを手がけているだけではありません。例えばアニメーションの世界では東映がフィリピンを80年代からBPO先にしてきた歴史があります。世界中でも人気のアニメ「ワンピース」や「ドラゴンボール」、「スラムダンク」を子供時代、学生時代に視て育った人
は多いはずです。これらの作品が実はフィリピンで製作されていると聞いたら驚く人も多いのではないでしょうか。

東映アニメーションでは線画、着色、背景などの工程のおよそ7割がフィリピンで行われています。そして80年代から約20年以上フィリピンのBPOによって日本の人気アニメーションは製作
されてきたのです。そして日本の3割ほどのコストで製作できるためコストダウンも実現できています。この事例からフィリピンは英語のコールセンターだけではなく多種多様な業種のBPO先と
して有望で実績もあることが伺えます。

ゼロックス社では日本人のマネージャーを駐在として派遣しフィリピン人スタッフと連携して日本語のメール対応をするチームを編成しています。フィリピンBPOといえば英語圏のイメージが
強い方も多いのですが日系企業のBPO先としても選ばれています。

IT企業のオフショア開発でもフィリピンは存在感があります。英語ができるエンジニアのフィリピン人も育っており労働集約型の産業以外でも伸びています。現在のフィリピンでは現地のエンジニアも日本人のエンジニアも活躍しています。

フィリピンは英語留学先としても日本人や韓国人に人気です。しかし最近ではわざわざ現地に行かずオンラインで英会話を練習できるサービスも人気です。そのためフィリピン人の先生と日本人の
英語学習希望者をマッチングする英会話サービスも盛んになりました。これもある種のBPOの形
かもしれません。

確かに英語圏のBPOはフィリピンBPOの柱ですが日本も英語圏以外の有力なマーケットとして認知されています。しかし日系企業でもバックオフィス業務、ソフトウェア開発、製造業などフィリピンをBPO先として選ぶところは少なくありません。ベトナムやタイなど他のアジア圏でもBPOは拡大していますがフィリピンは英語圏であること、人件費の上昇率がベトナムやタイに比べると高くないこともあり優位性があります。

フィリピンのBPO事業で働く人の仕事と暮らし

フィリピンのBPO事業での収入は他の産業に比べて相対的に高めです。そのためフィリピン人の
中間層の拡大にBPO事業は貢献してきました。そしてフィリピンBPOに携わるのはフィリピン人だけではありません。

フィリピンの日系企業には日本人のマネージャーやスタッフも働いていることも珍しくありません。現地のフィリピン人スタッフを指導する立場の日本人もいればスタッフや技術者として働く
日本人、日本とフィリピンのブリッジ役として活躍する日本人もいます。

物価の安いフィリピンでは日系企業の給与水準はフィリピンローカルの企業に比べ相対的に高い水準です。そのた現地の給与水準以上の所得を物価の安いフィリピンで受けとれるため南国で十分に恵まれた生活を送ることもできます。

またオフショア・BPO先として人気の他のアジア圏と違いフィリピンは英語圏です。そのため、
日本人がフィリピンで働けば自然に英語力も身につきやすい環境です。他のベトナムやタイのような非英語圏に比べ汎用性の高い英語力も仕事を通して高められるのは日本人の働き手にとっても
大きなメリットです。

フィリピンは日本から比較的近く最近ではLCCも就航しているため安価な運賃で約4時間から5時間で行き来することができます。そのため一時帰国など用事ができても気軽に日本に帰れます。日本の本社からフィリピンのBPO先を訪れる時間とコストの面でも経営者にとって優れています。

大都会マニラはスペイン植民地時代のコロニアルな建築物とモダンな高層ビルが同居する東南アジア屈指の都市です。大規模のショッピングモールもありラグジュアリーブランドから現地のお買い得なものまで手に入ります。外食できるところも豊富にあるためプライベートも充実できる環境です。マニラのような大都会以外でもセブ島のような海沿いのリゾート地にもBPO関連の企業は
数多くあります。大都会も大自然もあるのがフィリピンは魅力です。

治安の面でフィリピンは大丈夫なのだろうかと思う人もいるかもしれません。しかしアジア圏全般に言えることですが経済成長するにつれアジア全域の治安が良くなってきています。フィリピンも
例外ではりません。もちろん海外ですので日本よりも気をつけなければいけないこともたくさんあります。金銭目当ての軽犯罪などには日頃から注意をしなければいけません。しかし、それは他の
BPO先として選ばれているベトナムやタイなどでも同じで海外では最低限の注意は必要です。

昔に比べるとフィリピンの治安は良くなりました。フィリピンは英語留学、リゾート、南国、
モダンな大都市へと姿を変えています。そのため日本人でも働きやすい国になりました。今では
フィリピンで働く日本人も珍しくありません。

フィリピンのBPO事業の今後の可能性

フィリピンのBPO事業の今後の可能性は明るいです。フィリピン以外にもBPOの受け皿になろうとしてる国もたくさんあります。しかし公用語が英語であること、サービス水準、現地の通貨の
安定性、人件費、インフラ、若い世代が多いことなどフィリピンには強みが豊富にあります。そのためフィリピンが引き続きBPOの受け皿として今後も高い支持を受け続けることが予想されます。

現在でもフィリピンのBPO事業は成長している最中ですが伸び代はまだまだあります。2016年には120万人にまで拡大したBPO業界の雇用数は2022年で180万人の雇用にまで規模が拡大するだろうという予測もあります。そしてBPO事業が新たに生まれることで周辺事業も拡大してい
く好循環が続く見込みです。マニラ都市圏以外にもBPOセンターは地理的に拡大できる余地があります。

日本は現在、様々な産業で少子高齢化による人手不足に陥っており人材不足です。確かにAIを
はじめとした新しいテクノロジーや日本にやってくる外国人労働者の増加によって人手不足を解消する取り組みもあります。しかしAIやテクノロジーだけでは代替が難しい産業や領域もあります。また外国人労働者を日本で雇用するよりもBPO事業に投資をし現地で現地の人に働いていも
らう仕組みをつくる方がうまくいくことも多いのではないでしょうか。

フィリピンは現在も経済成長を続けており若者が明日は今日よりも明るいと信じられる国になりました。そして意外に知られていませんがフィリピンは1950年代は日本に次ぐアジア第2位の経済成長を誇った豊かな国でした。マルコスの独裁政権による腐敗がフィリピンが本来もっていた
ポテンシャルの高さを駄目にした経緯があります。しかしアキノ大統領の公約「腐敗撲滅とクリーン政治」の政策はフィリピンの貧困問題の解消や財政健全化を推し進めました。後任のドゥテルテ
大統領も腐敗撲滅を進めています。フィリピンは長きに渡った独裁政権の時代から大きく飛躍して
本来あるべき姿に成長している最中の国です。BPO先にフィリピンを選べばフィリピンの高いポテンシャルと経済成長の恩恵も期待できます。

投資先としても働き口としてもフィリピンのBPOは現在、成長中で他のアジア圏に比べても
強みがあります。