フィリピンの可能性について、弊社須見のインタビュー記事を掲載いたしました。

2021年9月29日

「とにかく前向きで、可能性に満ちている」

金融業を中心にフィリピンでさまざまなビジネスを展開しているS DIVISION HOLDINGS会長の須見一がフィリピン人に抱いた第一印象だ。大きな可能性を感じた須見はその後も約10年にわたり、フィリピンとのつながりを深くしていった。

須見 フィリピンの現在の人口は1億1100万人です。労働人口は65%に達しており、僕がフィリピンでビジネスをはじめた10年前と比べても勢いを増しています。平均年齢23歳と日本の半分以下なので、今後は経済がさらに拡大していくことは間違いありません。社会を動かしている人間が若く、海外から新たな人や情報、ビジネスが入っていることで活気を生んでいる。現地にいると、日本や欧米にはない強烈なハングリーさを実感します。

新興国はその多くが経済的に不安定で、為替リスクが大きな懸案となるが、フィリピンはそうしたリスクが極めて低いという。

須見 新興国ながら通貨のフィリピンペソはとても安定しています。これはフィリピンが世界でも有数の『労働力輸出国家』であり、経常収支が黒字であることが主な要因です。海外労働の送金が非常に大きく、国外から資本がどんどん流入している。こうした国家財政のバックグラウンドがあるため、簡単に為替が暴落することはありません。

欧米でもすぐに溶け込める癖のないフラットイングリッシュを話すこともフィリピン人の強みです。英語が母語でない我々日本人にとっても聞き取りやすいため、ビジネスがしやすいことも利点といえます。以前、インドやタイなどほかのアジア諸国も実際に見て回りましたが、他国と比較してもホスピタリティが高く、素直で陽気な国民性はフィリピン人ならではの魅力ですね。

 

フィリピンが秘める可能性と今後の課題

目覚ましい発展を遂げるフィリピンだが、その成長は今後も続くのか。須見は今後のフィリピン経済の課題は「新たな産業の創出」だと指摘する。

須見 2000年代以降、フィリピンのポテンシャルに魅力を感じた諸外国から資金が流れ、大きく成長することができました。国際情勢の潮目はすぐに変化してしまうため、断言は難しいのですが、引き続き先進国が中心となり、フィリピンにお金が流れやすい仕組みが維持されれば、さらに発展していくと考えています。

今後の課題としてはBPO(ビジネスプロセスアウトソーシング)に次ぐ産業が育つかどうかです。将来的に人件費が上がってしまえば、BPOは今までとおりというわけにはいかない。フィリピンがほかの新興国から一歩抜け出して、アジアを牽引する存在になるかはここ数年の動きは特に重要になってきます。

スポーツと同様で、有能な指導者や適切な環境がビジネスでも必要です。そういったリソースが集まれば、一気にトップランクに行ける潜在能力は秘めています。優れた人やビジネスが順調に供給されれば、今後、さらに成長していく可能性は高いと考えられます。

2020年から現在に至るまで世界中に深刻な打撃を与えた新型コロナウイルスの脅威。フィリピンも当然、例外ではない。

須見 もともと経済規模が小さいため、日本や欧米諸国と比べると比較的ダメージは少なかったかもしれませんが、やはり失ったものはあります。ロドリゴ・ドゥテルテ大統領は就任以来、強いリーダーシップと繊細な外交でフィリピンの成長に大きく寄与してきました。そんな大統領の貴重な2年間がコロナ対策に費やされてしまった損失は計り知れません。

日本では強権的な部分がクローズアップされることが多いドゥテルテ大統領ですが、経済成長を加速させた功績は大きく、外交手腕も兼ね備えた優れたリーダーです。その証拠にフィリピン国内での政権支持率は80~90%。これが答えだと僕は思います。いかにフィリピンのために尽力し、結果を出してきたのか、国民からの支持が物語っています。

ただし、国民的人気を誇るドゥテルテ大統領の任期もあと1年を切っています。フィリピンの大統領は1期6年が任期で、再選は禁止。そのため、ドゥテルテ大統領は次期副大統領を目指して動いていますが、先行きはまだ不明瞭な部分が大きいです。来年5月に控える大統領選の行方は、今後のフィリピンを大きく左右することになります。

 

変わりつつある日本とフィリピンの関係性

労働力の輸出が盛んだったフィリピンにとって、長きにわたってパートナーであり続けた日本。そんな両国の関係性は近年、変化が生まれているという。

須見 正直にいうと、10年前はもっと日本人が尊敬されていたし、日本を目指すフィリピンの若者も多かった。しかし、今は日本に行くよりもアメリカなど英語圏に行ったほうが稼げると考えられています。先ほども触れたとおり、フィリピン人は欧米でも通用する英語を話すことができるので、わざわざ非英語圏を選ばないのは仕方ないことですが、日本とフィリピンをつなぐビジネスをしている立場としては非常に残念に感じます。

現在は「働き先」というよりも「旅行先」というイメージのほうが強いかもしれません。清潔で、安全で、おいしい食べ物がある観光地。フィリピンの富裕層にとって、日本はそういった印象の国になってきています。

グローバル化が進むなかで、国際社会における日本が立ち位置が大きく変化。その変化にもっとも敏感にならなくてはいけない日本人が気づけていけないことが少なくない。

須見 ただし、日本に対する親和性は今も高いと実感する場面はあります。フィリピンでビジネスをはじめてすぐの頃、50代のドライバーからいきなり「『ボルテスV』が好きなんです!」って言われたことがありました。当時、僕はその名前も知らなかったのですが、1970年代に日本でつくられたロボットアニメ『超電磁マシーン ボルテスV』がフィリピンでは国民的アニメになっていて、ずっと親しまれてきたそうです。

ほかにも『スラムダンク』や『ドラゴンボール』などはよく知られています。誰と話しても日本のカルチャーに触れた経験があり、日本のマンガやアニメを面白がる感覚は共通していると思います。今、日本で放送されている最新のドラマやアニメもほぼオンタイムで視聴できる環境が整っているので、カルチャーを通じて、親近感を覚える機会は多いですね。

 

フィリピンの意外な成長産業

カルチャーを通じた交流には今後も可能性を秘める一方、ほかに日本がフィリピンとタッグを組んでいくうえで“武器”となりうる産業は数多くあると須見は考える。

須見 まさに僕らのビジネスの範囲ではあるのですが、成長著しいフィリピンではお金を借りたい人はたくさんいるので、金融業にはまだまだチャンスはあると思います。資本があれば、金融ビジネスのポテンシャルは相当大きいですね。ただ、独特のルールであったり、貸し倒れであったり、乗り越えないといけないハードルはいろいろあるので、現地人ときちんとパイプをつくり、事業計画を立てて参入する行動力があるか次第です。

あとは不動産業も間違いなく可能性が高い。経済発展にともなって不動産価格は上昇してきていますが、建築資材のレベルは先進国と比べると大きく見劣ります。物件価格に見合わないクオリティの資材が使われていることが珍しくありません。

一流のデベロッパーが建てた物件であっても、たくさん瑕疵があったりします。水準がまだまだ日本と比べると低いので、ここには大きなチャンスはあります。たとえば、ウォシュレットひとつとっても全然普及していません。東京オリンピックで来日した選手も感動していたようですが、海外の人にとっても潜在的なニーズがあるにもかかわらず、広がっていないものはフィリピンでも大きく流行るポテンシャルがあるはずです。

さらに経済発展や消費意欲の高まりによる需要拡大にも大きなチャンスがある。

須見 美容なども急速に関心が高まっている分野ですね。まつ毛エクステやジェルネイルなど日本でトレンドになったものはフィリピンでも注目を集めており、日本で話題になってからフィリピンに輸入されるまでのタイムラグもだんだんと短くなってきています。

国の発展が進むことで身だしなみへの関心がより高まってくるのは間違いなく、注目の分野のひとつです。この分野にあまり詳しくない僕が見ても、美容関連のサービスはまだ明らかに日本のほうが優れているので、フィリピンにそうした技術を持ち込めば、間違いなく流行すると思います。

日本で頑張って技術を身につけた方はフィリピンに移れば、成功できる可能性は十分に秘めていると考えています。ただし、大切なのはフィリピン人をリスペクトし、共存共栄を図ることです。

 

日本人が知らないフィリピン人のメンタリティ

フィリピンとのビジネスを望む日本人は少なくないにもかかわらず、失敗に終わるケースも多いという。

須見 残念ながら、まだどこかでフィリピンという国やフィリピン人を舐めている日本人は少なくありません。ひと昔前の経済力で比較すると、確かに日本のほうが進んでいました。しかし、それはもう過去の話です。フィリピンの富裕層やビジネスエリートから見れば、すでに日本は「将来性のない国」と思われつつあります。

それにもかかわらず、たとえば、日本では絶対にやらないのにフィリピンに来るとタバコをポイ捨てする日本人がいます。そうした言動に人間性や器が表れると僕も思いますし、パートナーを探すフィリピン人の視線はもっとシビアです。どこかでフィリピンを格下に見ている人は間違いなく見透かされるので、どんないい案件を持っていてもこの国でビジネスを成功させることはできません。

また、フィリピン人のメンタリティを受け入れたうえで、コミュニケーションをとることも重要となる。

須見 フィリピン人はとてもプライドが高く、自分に非があってもなかなか謝らないですね。僕自身、フィリピン人とのコミュニケーションには試行錯誤を繰り返してきましたが、一方的に責めて解決しないことがわかったので、何か問題が発生した際には謝罪を求めずに解決法を提案するようにしています。大勢の前で叱責などしようものなら、翌日から会社に来てくれなくなります。それくらいプライドが高いですね。なので、何かネガティブな内容のことを伝える際は別室に移り、2人で話し合うように意識しています。

あとはオーバートークが凄まじいのですが、そういったこともだんだんと慣れてきますね。「30億円の案件があります」と最初は言っていたのに実はせいぜい5億円。しかも、間に入る人がたくさんいて、さらに多額のマージンが引かれる……みたいな話は珍しくありません。数多くの失敗からそういったこともたくさん見えてきました。

 

現地でしか感じられないフィリピンの魅力

フィリピンで試行錯誤を続けてきた須見の結論。「まずは現地でその熱を感じてほしい」と考える理由とは?

須見 僕自身、フィリピンでたくさん失敗をしてきました。騙されたこともありますが、今になって思えば、すべて自分たちの注意不足や慢心が原因です。たとえば、不動産登記がすぐに反映されないこともフィリピンでは日常茶飯事。我々が担保としてとった物件が、実はすでに権利が第三者に移っていたなんてこともありました。そういった商習慣の違いや国民性の違いによるコミュニケーションの問題などは失敗してみて初めて学ぶことも少なくありません。

ただし、そういったリスクを恐れて進出を諦めるのはもったいないほどのポテンシャルがフィリピンにはあります。その理由は冒頭に述べたとおりですが、少しでも気になった方はぜひニュースなどで情報を追ってみてください。そして、コロナ禍が落ち着いたのちには現地に行ってみると、僕が10年前に感じ、以後ずっと魅了され続けているフィリピンの熱を肌で感じるはずです。

コロナ禍以降の国際情勢や経済動向はいまだに不透明なままですが、変化に対応するにはいち早く情報を集めて、行動する必要があります。日本とフィリピンとは地理的にも近く、これまで長きにわたって交流を続けてきました。ビジネスの面でも、コミュニケーションの面でも親和性が高いことは間違いないありません。もし、フィリピンへの投資やビジネスに興味を持つ人がいるならば、新しい時代の日本とフィリピンの関係性を一緒に築いていければと考えています。

S DIVISIONホールディングス

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